AIデータセンター需要の急拡大でHBM・DRAMの供給が逼迫するなか、SamsungとSK hynixが次世代DRAMの製造技術でまったく異なるアプローチを採用している可能性があると、Wccftechが2026年5月7日に業界関係者の情報として報じました。Samsungは半導体業界で注目されるGAAFET技術をDRAMに転用する方向を検討しているとされ、SK hynixは4F²構造による垂直スタック方式を実験中と伝えられています。DRAMの世代表記では「1c」が10ナノメートル以下のノードを指すアルファベットコードとして使われており、微細化競争の最前線でこの2社の戦略の違いが鮮明になっています。
なぜ今、3D DRAMが必要なのか——製造ノードの限界と背景
DRAMのノード表記と微細化の壁
アプリケーションプロセッサの製造プロセスがナノメートル単位で表記されるのに対し、DRAMはアルファベットコードで世代を表します。「1c」は10ナノメートル以下のノードで製造された製品を指す表記です。
DRAMはデータを保持するためにキャパシタ(蓄電素子)とトランジスタがセットで必要です。製造ノードが微細化するほどキャパシタを一定サイズ以上に保つことが難しくなり、従来の平面構造では限界が近づいています。この課題に対応するため、業界はトランジスタを水平方向に並べる3D DRAM構造へと移行しつつあります。垂直方向に積み重ねると隣接するトランジスタ同士が接触するリスクが高まるため、水平配置が有効とされています。
AIデータセンターの急拡大はHBM・DRAM・その他チップが同じ原材料を共有しているため、メモリ市場全体の需給逼迫につながっているとWccftechは伝えています。
SamsungとSK hynixが選んだ次世代DRAM製造の2つの道
次世代DRAMを巡る2社のアプローチ
| 項目 | Samsung | SK hynix |
|---|---|---|
| 採用技術 | GAAFET(ゲート・オール・アラウンドFET) | 4F²垂直スタック |
| 回路配置 | メモリアレイの下に配置(NAND方式を転用) | トランジスタ柱の下にデータ受信部を配置 |
| 現在の状況 | 検討中(業界関係者が示唆) | 実験中(業界関係者が示唆) |
Wccftechが業界関係者の情報として伝えたところによると、SamsungはGAAFET製造プロセスを次世代DRAMチップに応用することを検討している可能性があります。GAAFETはトランジスタのゲートをチャネル全体に巻き付ける構造で、ゲートとチャネルの接触面積が増えることで電流制御の精度が向上し、性能改善につながります。
Samsungが検討しているとされる手法では、読み書きなどの動作を管理する回路をメモリアレイの下に配置します。これはNANDフラッシュメモリの製造で使われている手法をDRAMに転用するアイデアで、業界関係者が示唆しているものです。ただしDRAMはキャパシタとトランジスタの組み合わせが必要なため、GAAFETトランジスタとキャパシタを1つのセル内に統合しながらこの配置を実現する方法を模索しているとされています。
一方SK hynixは、4F²アプローチを実験中と報じられています。こちらはトランジスタを垂直方向に積み重ね、ゲート材料をトランジスタ柱に巻き付ける構造で、GAAFETに近い考え方を持ちます。キャパシタからデータを受け取る部品はトランジスタ柱の下に配置されるとされています。
次世代DRAM競争が示す業界の転換点
平面型DRAMのスケーリングが実質的な限界を迎えつつあるとの認識が業界内で広がっており、「次の主戦場は3D構造DRAM」という流れが加速していると見られます。SamsungとSK hynixがそれぞれ異なるアーキテクチャを追求していることは、どちらの方式が次世代の業界標準になるかがまだ決まっていないことを示唆していると考えられます。どちらのアーキテクチャが量産に至るかは、今後の業界動向を占う重要な指標になると見られます。
Q&A
Q. SamsungがDRAMに転用しようとしているNAND方式の「回路をアレイ下に置く」手法とは何ですか? A. NANDフラッシュメモリでは、読み書きなどの動作を管理する回路をメモリセルアレイの下に配置する構造が採用されています。Samsungはこの配置手法をDRAMチップに応用することを検討している可能性があると、業界関係者がWccftechに示唆しています。DRAMはキャパシタとトランジスタの組み合わせが必要なため、GAAFETトランジスタとキャパシタを1つのセル内に統合しつつ、この回路配置を実現する方法を模索しているとされています。
Q. SK hynixの「4F²垂直スタック」はSamsungのGAAFETアプローチとどう違うのですか? A. SK hynixの4F²アプローチはトランジスタを垂直方向に積み重ね、ゲート材料をトランジスタ柱に巻き付ける構造です。GAAFETと似た考え方を持ちますが、キャパシタからデータを受け取る部品をトランジスタ柱の下に配置する点が特徴とされています。一方SamsungのGAAFETアプローチは、回路をメモリアレイの下に置くNAND方式の配置を組み合わせる方向で検討されているとされており、両社は構造的に異なる解決策を追求している可能性があります。いずれも業界関係者が示唆している段階で、正式な発表はありません。
前世代・競合との比較早見表
| 項目 | Samsung(次世代DRAM) | SK hynix(次世代DRAM) | 従来の平面DRAM |
|---|---|---|---|
| 製造技術アプローチ | GAAFET+NAND方式回路配置(検討中) | 4F²垂直スタック(実験中) | 平面構造・従来トランジスタ |
| トランジスタ構造 | ゲートをチャネル全体に巻き付け | トランジスタを垂直積層・ゲート材料を巻き付け | 平面型トランジスタ |
| 回路配置 | メモリアレイ下(NANDから転用) | トランジスタ柱の下 | — |
| 対象ノード世代 | 1c(10ナノメートル以下)以降 | 1c(10ナノメートル以下)以降 | 1c世代までの各ノード |
| スケーリング限界 | 3D化で限界突破を目指す | 3D化で限界突破を目指す | 微細化に伴いキャパシタサイズ確保が困難 |
| 現状 | 業界関係者が示唆 | 業界関係者が示唆 | 現行製品として量産中 |
