CPUとGPUの使用率はプロセス単位で追えるのに、NPUだけはブラックボックス——Copilot+ PCを持つユーザーが抱えてきたこの欠点に、Microsoftがようやく手をつけた。Windows 11 Insiderプログラムの実験的チャンネル向けビルド「28020.1921」(バージョン26H1)で、Task ManagerにNPU専用の監視列が初めて追加された。AIワークロードがどのプロセスでNPUをどれだけ消費しているかを、これまでCPUやGPUで行ってきたのと同じ操作感で確認できるようになる。

バッテリーが減る「見えない犯人」をついに特定できる

Task ManagerはCPU・GPU・メモリの使用状況をプロセス単位で可視化してきた。しかしCopilot+ PCが搭載するNPUは、AI機能をバックグラウンドで処理しているにもかかわらず、その使用状況は画面上にまったく現れなかった。「なぜバッテリーがこれほど消耗するのか」「なんとなく動作が重い」——その原因がNPUにあっても、確認する術がなかった。

ビルド28020.1921でその空白が埋まる。追加される内容は以下の通りだ。

  • 「プロセス」「ユーザー」「詳細」の各ページに、オプション列として「NPU」と「NPUエンジン」が追加
  • 「詳細」ページにはさらに「NPU専用メモリ(NPU Dedicated Memory)」と「NPU共有メモリ(NPU Shared Memory)」のオプション列も追加。各ワークロードがNPUリソースをどのように使用しているかをプロセス単位で深く把握できる
  • GPUに組み込まれたニューラルエンジンは「パフォーマンス」ページに表示されるようになり、AI関連のシステムアクティビティ全体を網羅的に確認できる

いずれもオプション列のため、必要に応じて表示・非表示を切り替えられる。

実用上の意味は大きい。CPUが100%に張り付いたとき、プロセス一覧を開いて原因プロセスを特定するのと同じ手順で、NPUの状態を監視できるようになる。バッテリー消耗の原因調査やパフォーマンス診断において、これまでは不可能だった観点が加わる。「NPU使用率が高いのはどのアプリか」を数値で確認できることは、AI機能を多用するワークフローの最適化にも直結する。

AppContainerの可視化とVMバグ修正も同梱

NPU関連以外にも、ビルド28020.1921は実用的な改善を2つ含んでいる。

「プロセス」ページと「詳細」ページに、オプション列「Isolation(分離)」が追加された。この列を有効にすると、AppContainerで実行されているアプリをプロセス一覧から即座に識別できる。AppContainerはWindowsのサンドボックス分離機構で、通常プロセスとサンドボックス実行プロセスを区別する手段がTask Managerになかった点は長年の死角だった。セキュリティ問題の調査や、特定アプリが想定外の権限で動作していないかの確認において、この列は即戦力になる。

バグ修正として、仮想マシン(VM)がハイバネートから復帰した後、Task Managerの「パフォーマンス」ページに表示されるCPUクロック速度が異常に高い値を示す問題が解消された。開発・テスト用途でVMを日常的に使うユーザーにとっては、誤った数値に翻弄されなくなる具体的な改善だ。

NPU監視が「今」追加される理由——Windowsが管理対象を再定義しつつある

MicrosoftがNPU監視をTask Managerに統合するタイミングは、Copilot+ PC市場の成熟と連動している。認定機の普及が加速し、OSレベルでNPUを活用するアプリが増え続ける中、ユーザーはそのリソース動作をまったく確認できなかった。Task ManagerへのNPU統合は、WindowsがNPUをCPU・GPUと同列の管理対象リソースとして正式に認識し始めた転換点とも読める。この基盤が整うことで、今後の省電力最適化やパフォーマンス診断ツールがNPUデータを参照できるようになる可能性がある。

同時に公開された「29580.1000」(Experimental Future Platforms)には新機能の追加はなく、全般的な修正のみが含まれている。

Q&A

Q. 自分のPCにNPUが搭載されているか確認する方法は? デバイスマネージャーを開き、「システムデバイス」または「ニューラルプロセッサー」カテゴリを確認する。NPU非搭載のPCでは今回追加される列は表示されない。Copilot+ PC認定を受けた機種はNPU搭載が前提条件となっている。

Q. NPU使用率を見て、具体的に何ができますか? 「NPUをどのアプリが消費しているか」をプロセス単位で把握できる。バッテリーの急激な消耗や動作の重さの原因がNPU負荷にある場合、原因プロセスを特定して終了・設定変更といった対処が可能になる。CPUスパイクの診断と同じ発想で使える。

Q. AppContainer列を有効にして何ができますか? AppContainerで実行されているアプリをプロセス一覧から即座に識別できる。セキュリティ上の問題調査や、特定アプリが想定外の権限で動作していないかの確認に活用できる。

Q. 実験的ビルドを通常利用のPCに導入しても大丈夫ですか? 実験的チャンネルはMicrosoftが最も早期段階のテストを想定したビルドで、未解決のバグや不安定な動作を含む可能性がある。サブPCや仮想環境での検証を推奨する。

Q. 今回の機能はどのInsider参加者でも利用できますか? 実験的チャンネル(旧Canaryチャンネル)に登録しているユーザーが対象となる。

出典