Linuxユーザーが20年以上当たり前に使ってきた「ウィンドウをどこからでもドラッグ移動する」操作が、ついにWindowsに公式に届いた。MicrosoftはPowerToys v0.99.0をリリースし、新ユーティリティ「Grab And Move」と「Power Display」の2つを追加。既存ツール群にも実用的な改善が多数加わっている。

タイトルバーを狙い続けるストレスから解放——「Grab And Move」

「Grab And Move」は、Altキーを押しながら左クリックするだけで、ウィンドウのどこを掴んでも移動できるようにする機能だ。

Linuxのデスクトップ環境(GNOMEやKDEなど)では長年の定番操作として定着しており、それをWindowsに持ち込んだ形になる。従来のWindowsでは、ウィンドウを移動するには数ピクセル幅のタイトルバーを正確にクリックする必要があった。特に小さいウィンドウを多数並べて作業するパワーユーザーや、高解像度ディスプレイでUIが精密になる環境では、このクリック精度の要求が地味なストレス源になっていた。

Grab And Moveを有効にすれば、ウィンドウ内のコンテンツ部分を掴んだままドラッグするだけで移動できる。体感的には「画面全体がドラッグハンドルになる」感覚だ。

リサイズも同様に改善される。「Alt+右クリック」でウィンドウの端まで移動せずにそのままサイズ変更ができるため、マウスを画面端に運ぶ手間が省ける。複数アプリを高速で切り替えながらレイアウトを整える作業フローを持つユーザーなら、1時間の作業で発生する無駄な操作が目に見えて減るはずだ。

モニター調整を一か所に集約——「Power Display」

もう一つの新ツール「Power Display」は、システムトレイに常駐してモニターの輝度・コントラスト・カラープロファイル・音量をWindows上から一元管理する。

従来、モニターの輝度やコントラストを変えるにはモニター本体のボタン操作(OSDメニュー)が必要で、背面や底面の小さなボタンを手探りで押す煩雑さがあった。Power Displayはこれをソフトウェアから直接制御できる点が最大のメリットだ。

加えて、カスタムプロファイルを保存してワンクリックで切り替える機能も備える。日中の明るい環境、夜間の暗い部屋、動画鑑賞時、コーディング時——それぞれに最適化した設定を事前に登録しておけば、状況に応じて瞬時に切り替えられる。PowerToysの「Light Switch」機能と連携させると、Windowsがライトテーマとダークテーマを切り替えた瞬間にモニター設定も自動で追随する仕組みも持つ。テーマ切替のたびに手動でモニターを調整していたユーザーには、特に恩恵が大きい。

既存ツールの主要な改善点

新ユーティリティ2本に加えて、既存ツール群にも実用的なアップデートが入っている。

Command Palette Dockには高さ28pxのコンパクトモードが追加された(上部・下部配置時のみ対応)。計算機の履歴が永続保存されるようになり、これまでPowerToysを再起動するたびに消えていた計算履歴を参照できるようになる。ピン留め操作はダイアログ形式でより細かく制御できるようになり、フルスクリーンアプリ検出時は自動で非表示に、通常時は他のウィンドウより前面に表示される動作変更も加わった。

ZoomItはスクロールスクリーンショット機能を搭載した。縦に長いウェブページや設定画面など、従来は分割してキャプチャするしかなかったコンテンツを一度の操作でまとめて保存できる。プレゼン中にスクロールして見せる手間も省ける。

Keyboard Managerでは、登録済みのリマッピングをドロップダウンメニューから手動で編集できるようになった。特定のキーやショートカットを完全に無効化する操作も可能になり、誤入力防止の用途にも使いやすくなっている。

Image ResizerはWinUI 3へ移行し、Windows 11の設計言語に合わせた外観になった。機能の変化ではなく見た目の統一が主な変更点で、他のWinUI 3移行済みツールと並べたときの違和感が解消される。

Advanced Pasteでは、TeamsやVisual Studio CodeなどElectron/Chromiumベースのアプリでの自動コピーが不安定だった問題が修正された。修飾キーを解放してからCtrl+Cを送信する処理順に変更されたことで、これらのアプリでコピー操作が正しく完了しないケースが大幅に減る。Teamsのチャットを頻繁にコピーしてPasteを活用していたユーザーには直接影響する修正だ。


PowerToys v0.99.0はWindows 10・Windows 11向けに無料で提供されている。GitHubリポジトリからダウンロードできるほか、Microsoft Store経由のアップデートにも対応している。

Q&A

Q. PowerToysは有料ですか? 無料かつオープンソースのユーティリティ集で、Windows 10・Windows 11の両方で利用できる。Microsoft Storeまたは公式GitHubリポジトリから入手できる。

Q. 「Grab And Move」はどうすれば使えますか? PowerToys v0.99.0をインストール後、設定画面からGrab And Moveを有効化する。有効化後は、Altキーを押しながら左クリックでウィンドウをどこからでもドラッグ移動でき、Alt+右クリックでリサイズが行える。既存のPowerToysユーザーは通常のアップデート操作だけで利用できる。

Q. 「Grab And Move」はLinuxも対象ですか? 対象はWindowsのみ。Linux環境にはすでに同様の操作が標準搭載されているため、このツールはあくまで「Linuxで慣れ親しんだ操作感をWindowsに持ち込む」ために設計されている。対応OSはWindows 10とWindows 11だ。

Q. Power DisplayはどのモニターでもD使えますか? ソース記事では対応モニターの制限について具体的な言及がない。DDC/CI(Display Data Channel Command Interface)対応モニターが前提になる可能性があるが、詳細はPowerToysの公式ドキュメントで確認することを推奨する。

出典