5億ポンド(6億8,100万ドル)——これは映画一本分の制作費ではなく、まだ公式発表もされていないドラマシリーズ一作のためにNetflixが用意したとされる予算だ。 デイリー・メールの報道によれば、NetflixはプロデューサーのLeft Bank Picturesと正式契約を締結し、英王室ドラマ『ザ・クラウン』の前日譚(プリクエル)制作を動かし始めた。4年越しの水面下交渉がついにまとまった格好で、本編を手がけたピーター・モーガンが引き続き指揮を執る見通し。Netflixは現時点で公式コメントを出していない。
1901年——本編の「前章」はここから始まる
前日譚が描くのは、ヴィクトリア女王が崩御した1901年から、エリザベス王女とフィリップ・マウントバッテンが結婚するまでの期間だ。『ザ・クラウン』本編の第1話がまさにそのエリザベス王女の結婚式から幕を開けることを踏まえれば、時系列でシームレスにつながる「前章」として機能する。言い換えれば、本編の視聴者は「あの第1話の前に、何があったのか」を前日譚でそのまま追体験できる構造になる。
本編の最終シーズンは、ウィリアム王子とキャサリン妃の関係、チャールズ国王とカミラ王妃の物語まで描き切って完結した。「先」ではなく「過去」へさかのぼるという方向性は、モーガン自身が長年口にしてきたスタンスとも一致している。
5億ポンドが動く理由——本編の実績が数字で示す賭け
5億ポンド(6億8,100万ドル)という規模が合理的に見える背景には、本編の商業実績がある。『ザ・クラウン』は2018年のSAG賞でストリーミング部門の唯一の受賞作となり、ゴールデングローブ賞でもNetflixに連続的な栄誉をもたらした。Netflixのランキング上位を繰り返し占めてきた看板IPであり、前日譚はその資産を活かす投資として読むことができる。
モーガン氏はかつて「このテーマとはまだ向き合い続けたい。ただ、より近年の出来事を扱いたいとは思えない」と発言し、「過去に戻ると、常に比喩を使う素晴らしい機会がある」とも語っている。Netflixが本編の最終シーズン公開(2023年末)より前の2022年からLeft Bank Picturesと前日譚交渉を進めていたのは、このクリエイターの意向と、本編シーズン後半への視聴者反応を織り込んだ動きだったとも読める。
この報道を「どこまで信じていいか」を整理する
今回の情報はデイリー・メール → Engadget → 本記事という三段階の転載経路をたどっている。原報道はデイリー・メールの単独取材に基づくものであり、Netflixが公式確認を出していない以上、「Netflixが前日譚を作ると決まった」ではなく「Netflixが前日譚を作ると英紙が報じた」という水準で受け取る必要がある。
ただし、2022年からの交渉の経緯とモーガン自身の過去の発言が報道内容と整合している点は、単純な推測以上の根拠になっている。公式発表が出た時点で情報の確度は確定する。
Q&A:視聴者が本当に知りたい4つの疑問
Q. いつ配信される? 現時点で配信日はおろか、制作開始日すら公式発表がない。契約締結の報道が事実だとしても、制作期間を考えれば早くても数年後とみるのが現実的だ。続報を待つ段階。
Q. 本編のキャストは引き継がれる? 前日譚の時代設定(1901年〜エリザベス王女の結婚まで)は本編より半世紀以上さかのぼるため、本編キャストがそのまま登板するのではなく、ほぼ全員が新規キャスティングになるとみるのが自然だ。現段階では未発表。
Q. なぜ「続き」ではなく過去にさかのぼるのか? ピーター・モーガン自身が「より近年の出来事に取り組みたいとは思えない」と明言している。本編がチャールズ国王とカミラ王妃の現代の物語まで描き切った以上、「続き」は存命の王族をリアルタイムで描く形になり、政治的・倫理的ハードルは格段に高くなる。過去へさかのぼる選択は、制作リスク管理の観点からも理にかなっている。
Q. 前日譚が作られると、本編の見方は変わる? 時系列でシームレスにつながる構造上、前日譚を先に見れば本編第1話の重みが増す可能性がある。どちらを先に視聴するかというリリース順と鑑賞順の逆転は、近年のマーベル作品などでも話題になった現象だ。Netflixがどういった視聴体験を設計するかは、配信戦略の注目点になりうる。
