あなたが普段使うネット通販の配送速度やコストが、近い将来変わるかもしれません。Amazonが2026年5月4日、自社の物流・配送ネットワークを外部企業に開放する新サービス「Amazon Supply Chain Services(ASCS)」を発表しました。Amazonセラー以外の企業も対象とした本格的な物流プラットフォームへの転換であり、1.3兆ドル超とも言われる世界の物流市場に大きな影響を与える可能性があります。

ASCSとは何か——Amazonが自社物流を「売り物」にする

Amazonは今回の発表について、「あらゆる業種・規模の企業に対し、貨物輸送・流通・フルフィルメント・小口配送の全機能を開放する」と公式プレスリリースで説明しています。

これまでAmazonは、自社マーケットプレイスに出品する事業者向けにフルフィルメントサービスを20年以上提供してきました。ASCSはその対象を、Amazonのプラットフォームを利用しない企業にまで広げるものです。Amazonはこの動きを、クラウドサービス「Amazon Web Services(AWS)」の展開になぞらえています。AWSも元々は社内インフラとして構築されたものを外部に開放し、現在では世界最大級のクラウドプロバイダーとなっています。

Amazonは自社のサプライチェーンについて、単なる機能ではなく「差別化要因」であり、「他社には実現できなかった迅速で信頼性の高い配送を可能にした理由」だと述べています。その競争力の源泉を、今度は他社に販売するという大きな転換です。対象業種はヘルスケア・自動車・製造・小売など幅広い分野が想定されています。

次のセクションでは、そのASCSをいち早く活用する初期パートナー4社の具体的な活用方法を見ていきましょう。

初期パートナー4社——貨物輸送とフルフィルメントで異なる活用方法

サービス開始にあたり、Procter & Gamble(P&G)、3M、Lands' End、American Eagle Outfitters Inc.の4社が初期パートナーとして名を連ねています。

注目すべきは、4社の活用方法が大きく2つに分かれている点です。P&Gと3Mに対しては、製造拠点から流通ネットワークへの貨物輸送(freight)——つまり大量の荷物をまとめて運ぶ幹線物流——にAmazonのサービスが使われます。一方、Lands' EndとAmerican Eagleに対しては、消費者への直接配送(フルフィルメント)を担う形での活用が予定されています。製造業向けの幹線物流と、小売業向けの直接配送という、異なるニーズに対応できる幅広さがASCSの強みと言えます。

こうした多様な活用が可能な背景には、Amazonが世界中に倉庫・航空機・トラック・配送車両を持つ巨大な物流インフラを築いてきた事実があります。では、その規模はどれほどのものなのでしょうか。

USPS・DHLに直接競合——1.3兆ドル市場に殴り込み

Amazonはすでに米国最大の小口配送業者(ShipMatrix調べ)であり、世界最大のサードパーティ物流企業でもあります。ASCSの展開は、これまでAmazonの物流を支えてきたUSPS(米国郵便公社)やDHL Groupなど、主要な物流パートナーとの直接競合を生む可能性があります。

ASCS担当VPのPeter Larsen氏はThe Wall Street Journalに対し、世界のサードパーティ物流市場は1.3兆ドル超に上り、「非常に大きなビジネス機会」だと述べています。Amazonの規模を考えると、業界全体に大きな変化をもたらす可能性があります。特にUSPSはすでに財務的に非常に厳しい状況に置かれており、Amazonの参入がさらなる逆風になる可能性があると指摘されています。

Amazonはもともと自社の配送コスト削減を目的にUSPSなど外部キャリアへの依存を減らしてきた経緯があります。今回のASCSはその延長線上にある動きであり、物流業界の勢力図を塗り替えるインパクトを持つと見られています。

Q&A

Q. Amazon Supply Chain Services(ASCS)はAmazonで販売していない企業でも利用できますか? はい。ASCSはAmazonのマーケットプレイスに出品していない企業も対象としています。ヘルスケア・自動車・製造・小売など幅広い業種への提供が想定されています。

Q. ASCSはAWSのようなビジネスモデルになるのでしょうか? Amazonはそのように位置づけています。AWSが社内クラウドインフラを外部に開放して成長したように、ASCSも社内向けに構築した物流ネットワークを外部企業に販売するモデルです。ただし、ASCSが同様の規模に成長するかどうかは現時点では不明です。

Q. ASCSと既存のフルフィルメントサービス(FBA)はどう違いますか? 既存のFBA(Fulfillment by Amazon)はAmazonのマーケットプレイスに出品する事業者向けのサービスでした。ASCSはその範囲を大きく超え、Amazonで販売しない企業に対しても貨物輸送・流通・フルフィルメント・小口配送の全機能を提供するものです。

出典