スマートフォン5,000億台分のバッテリーを賄えるリチウムが、米国東部の地下に眠っているとしたら——。米国地質調査所(USGS)がアパラチア地方のペグマタイト岩層に最大230万メトリックトンのリチウム酸化物が存在する可能性を示したと、TechRadarが報じています。EV換算では約1億3,000万台分、米国の輸入量に換算すれば約328年分に相当するとされる規模です。

「328年分の輸入代替」——その規模をどう読むか

Fortuneの報道によると、今回の推定埋蔵量は、直近の需要水準に基づいて米国の約328年分のリチウム輸入を代替できる規模に相当するとされています。具体的には、スマートフォン約5,000億台、さらに数十億台のノートPCやタブレット、そして商業規模での採掘が実現した場合には約1億3,000万台のEV向けバッテリーを賄える可能性があるとされています。

リチウムはスマートフォンからEV、データセンターのバックアップ電源まで幅広く使われるリチウムイオン電池の主要原料です。メーカーが旧来の電池方式から移行を進める中、需要は増加を続けており、高速充電と長い動作寿命を必要とするシステムでリチウムイオン技術の需要は一層高まっています。現在、リチウムイオン電池の完成品製造では中国が圧倒的なシェアを持ち、スマートフォンからEV、データセンター向けシステムまで幅広い製品の供給を担っています。

なぜ今まで採掘されていなかったのか——埋蔵地点と岩層の特性

USGSによると、リチウムは主にペグマタイトと呼ばれる粗粒の花崗岩状岩石の中に閉じ込められているとされています。ペグマタイトは地下深部での冷却・結晶化の過程で有価元素を取り込む性質を持ちます。埋蔵地点の多くはカロライナ州(複数)の地下にあると考えられており、メイン州西部やニューハンプシャー州の地下にも追加の鉱床が存在すると推定されています。

なお、2025年12月にはネバダ州とオレゴン州の境界に位置するマクダーミット・カルデラでも、地質調査によって2,000万〜4,000万メトリックトンのリチウム含有物質が存在する可能性が示唆されたと報告されています。火山灰の堆積層と熱水活動がリチウムを濃縮した粘土層を形成しており、場合によっては露天掘りが可能な深さに位置するとされています。一方、アパラチア地方のリチウムはペグマタイト岩層の中に存在しており、採掘方法や難易度が異なります。

採掘・精製インフラの整備が最大の壁

規模の大きさとは対照的に、現時点での米国のリチウム生産能力は極めて限られています。直近の統計では米国のリチウム生産量は約610メトリックトンにとどまり、世界生産に占めるシェアは約**0.3%**に過ぎません。精製や大規模なバッテリー製造の多くは依然として海外で行われています。

業界関係者は、「発見だけでは生産を保証しない」と指摘しています。精製能力・環境許可・インフラの整備が、資源が実際に市場へ届くまでの速度を左右するとされており、TechRadarもこの業界関係者の見解を伝えています。アーカンソー州では化学的抽出手法を用いた国内生産能力の拡大に向けた政府支援・民間投資プロジェクトがすでに進行中とのことです。精製能力・環境許可・インフラという複数の課題をクリアできるかどうかが、今回の埋蔵確認が実際の供給増につながるかを左右する重要な分岐点となります。


Q&A

Q. アパラチア地方のリチウムはいつ採掘が始まりますか? 現時点では商業規模での採掘開始時期は確認されていません。精製能力・環境許可・インフラ整備が課題として挙げられており、業界関係者は発見だけでは生産を保証しないと指摘しています。アーカンソー州では化学的抽出手法を用いた政府支援・民間投資プロジェクトがすでに進行中とされていますが、アパラチア地方の採掘開始に関する具体的な時期はソース記事では示されていません。

Q. 今回の発見は中国のバッテリー市場支配にどう影響しますか? 中国はリチウムイオン電池の完成品製造で大きなシェアを持ち、スマートフォンからEV、データセンター向けシステムまで幅広い製品の供給を担っています。今回の推定埋蔵量が実際に採掘・精製されれば供給源の多様化につながる可能性がありますが、その実現には精製能力・環境許可・インフラという複数の課題の解決が必要とされています。

Q. マクダーミット・カルデラとアパラチアの発見はどう違いますか? マクダーミット・カルデラ(ネバダ州・オレゴン州境)は粘土層にリチウムが含まれており、場合によっては露天掘りが可能な深さに位置するとされています。一方、アパラチア地方のリチウムはペグマタイト岩層の中に存在しており、採掘方法や難易度が異なります。なお、推定埋蔵量はマクダーミット・カルデラが2,000万〜4,000万メトリックトンのリチウム含有物質、アパラチア地方が最大230万メトリックトンのリチウム酸化物とされており、形態や単位も異なる点に留意が必要です。

出典