キーボードもタッチパネルも要らず、太腿に指で文字を書くだけでメッセージを送れる——Metaのディスプレイ搭載スマートグラス「Ray-Ban Display」が、大型アップデート「update 125」を受け取りました。数か月のクローズドベータを経て、机や手のひら、太腿などの表面に指で文字を「書く」Neural Handwritingがついに全ユーザーに開放され、さらにサードパーティ開発者向けにも門戸が開かれています。
Neural Handwritingが全ユーザーに開放——机や太腿が「入力面」になる
これまでMessengerとWhatsApp内の限定アクセスベータにとどまっていたNeural Handwritingが、iOS・Androidの双方で一般提供されました。Instagram、WhatsApp、Messenger、そしてスマートフォンのメッセージ通知をまたいで、連絡先検索やメッセージの送受信・返信に利用できます。
利用には、$800(約12万円)のRay-Ban Displayに同梱されているNeural Bandの装着が必須です。このバンドはsEMG(表面筋電位)技術を搭載しており、机・手のひら・太腿など任意の表面で指を動かす動きを認識し、「書いた」文字として取り込みます。空中で振り回すのではなく、身近な平面を入力面に変えてしまう発想は、スマートグラスのUXとして特徴的な設計だといえます。なお、見出しでは「typing through air gestures(空中ジェスチャーによる入力)」と表現されていますが、実際の機能説明では「任意の表面(机・手のひら・脚)に指で書く動き」を認識する仕組みであると明記されています。
録画・マップ・WhatsApp——地味だが効くアップデート群
Neural Handwriting以外にも、update 125には機能追加が多数含まれています。
- ディスプレイ録画機能: ディスプレイ表示・カメラPOV映像・周辺音を1本の動画ファイルにまとめて記録できます
- マップの拡張: 検索結果が充実し、徒歩経路がアメリカ全土とロンドン・パリ・ローマなどの主要国際都市をカバー。自宅・職場の保存や音声ナビにも対応
- WhatsApp: グループビデオ通話と通話キャプションをサポート
- Instagram: Reelsの再生とDMのナビゲーションを改善
- Facebook: 誕生日・スポーツ用のウィジェットを追加
ディスプレイ録画は、グラスをかけている本人視点を画面表示込みで記録できる機能として案内されています。
サードパーティ開発に正式開放——YouTube再生やゲームの実装例も
今回のアップデートでもっとも見逃せないのが、Ray-Ban Displayがサードパーティ開発者に正式開放された点です。
開発には2つのルートが用意されています。
| 開発手段 | 内容 |
|---|---|
| Device Access Toolkit SDK | iOS・Android向け。既存のネイティブアプリにグラス対応のUIを追加、または新規アプリを開発 |
| WebApp | 作り込めばグラス上でも見栄えと挙動を整えられる |
すでにコミュニティではYouTube動画をグラスで再生する方法が見つかっており、初期のサードパーティ事例として航空関連ツール、買い物リスト、公共交通ナビ、そしてゲームなどが登場し始めていると伝えられています。
ディスプレイ付きスマートグラスにサードパーティ開発の門戸が開かれたことは、プラットフォームとして一つの節目と受け止められる可能性があります。
日本のユーザーが今押さえておきたいポイント
Ray-Ban Displayは現時点で日本での正規販売状況は公表されていません。マップの徒歩ナビ拡張も対象はアメリカ全土とロンドン・パリ・ローマなどの主要国際都市にとどまり、東京などは明示されていません。日本語のNeural Handwriting対応についても、公開情報の範囲では明らかにされていません。
それでも、机や太腿に指で文字を書く入力UIが「ベータ卒業して全ユーザー提供」まで到達したとされること、そしてサードパーティ向けSDKが配られ始めたことは、スマートグラスというカテゴリにとって一つの節目と見ることができそうです。今すぐ買えるデバイスではないものの、メガネ型デバイスを将来の選択肢として見ているのであれば、現時点のRay-Ban Displayの動きは追っておく価値が高いといえます。
国際展開は無期限延期——「売れすぎ」が引き起こした供給逼迫
CES 2026のタイミングで明らかになったのは、Ray-Ban Displayの国際展開計画そのものが棚上げになったという事実です。Metaは「前例のない需要と限定的な在庫」を理由に、英国・フランス・イタリア・カナダ向けのRay-Ban Displayの提供を一時停止しています。当初は2026年初頭にこれら4か国で発売される計画でしたが、現在は国際展開が無期限で延期されています。
米国内でも入手は容易ではない
Metaは「昨秋のローンチ以降、圧倒的な関心を集めており、その結果、製品の順番待ちは2026年内まで延びている」と公式ブログで説明しています。2026年4月時点でもRay-Ban Displayは米国限定の製品にとどまり、Best Buy、LensCrafters、Sunglass Hut、Ray-Ban公式ストアなど指定の小売店でのみ販売されています。この延期は規制上の問題ではなく、製造パートナーであるEssilorLuxotticaが米国の需要急増に追いつくほど生産規模を拡大できていないことが主因とされています。
AIスマートグラス市場が「4倍成長」へ——SamsungとAppleの参戦が迫る
Ray-Ban Displayが供給制約に苦しむ一方、AIスマートグラス市場そのものは2026年に大きな転換点を迎えようとしています。Smart Analytics Global(SAG)の予測では、2026年のグローバルAIスマートグラス売上は4倍に拡大し、出荷台数は2025年の600万台から2000万台に、市場規模は12億ドルから56億ドルに伸びる見通しで、米国と中国が世界需要の約8割を占める見込みです。
| 競合プレイヤー | 投入時期 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| Samsung Galaxy Glasses | 2026年7月22日のGalaxy Unpackedで発表予定 | Gentle Monsterと協業、Android XR+Gemini搭載、ディスプレイ非搭載でカメラ・スピーカー・マイク構成 |
| Apple スマートグラス | 2026年後半のホリデーシーズン投入を狙い、カメラ・音声・Siri中心でディスプレイ非搭載 |
SAGはさらに、HUD搭載型のAIスマートグラスが2028年以降に音声のみ型を上回ると予測しており、リアルタイム翻訳・ナビゲーション・文脈AI支援といった視覚的なAIユースケースが牽引すると見ています。ディスプレイを最初から搭載しているRay-Ban Displayは、その意味で先行ポジションを確保している格好です。
Q&A
Q. Neural Handwritingは日本語入力にも対応していますか? 現時点では公表された情報の中に日本語対応への言及はなく、明らかにされていません。利用可能なアプリとしてはInstagram、WhatsApp、Messenger、スマートフォンのメッセージ通知が挙げられています。
Q. Neural Bandの仕組みはどうなっていますか?事前学習は必要ですか? Neural BandはsEMG(表面筋電位)技術を用い、表面上で指を動かす動作を認識して文字として取り込む仕組みとされています。学習やキャリブレーションの詳細については、現時点では明らかにされていません。
Q. 日本でRay-Ban Displayは購入できますか? 本体価格は$800(約12万円)と案内されていますが、日本での正規販売状況は現時点で公表されていません。
