性能はRTX 4060対抗を掲げながら実態はRTX 3060相当——それでも見出しで「48時間で3万台超」とされる予約完売を達成した中国GPU「LX 7G100」。なぜ性能不足でも売れたのか? Tom's Hardwareの報道をもとに、数字と背景を読み解きます。販売は中国市場(JD.com 中心)に限定された動きである点を最初に押さえておくと、読み筋がぶれません。

3万台超の予約を獲得——予約販売額は約$14.55百万規模(中国市場での動き)

中国の新興GPUメーカー Lisuan Tech のゲーミング向けグラフィックスカード「LX 7G100」が3万台超の予約を集めたと Tom's Hardware が報じています。Tom's Hardwareの見出しでは「48時間で3万台超」と表現されていますが、本文の記述は「more than 30,000 preorders」となっており、厳密な時間枠は見出しに依拠した表現である点に注意が必要です。

今回の販売は中国の電子商取引大手 JD.com を中心とした中国国内市場限定の動きとして報じられており、グローバル販売についての言及はありません。MSRPは中国で$485(約7万6千円)、3万台 × $485 から算出される予約販売額は約$14.55百万(米ドル=約158円換算で約23億円)規模に達するとTom's Hardwareは報じています。BOM(部品コスト)は非開示で、利益率は読み解けません。

JD.comのグラフィックスカード販売ランキングでは、Lisuan Tech はすでに Asus、Colorful、Gigabyte、MSI といった大手の後ろにつける形で6位に位置しているとされます。新興ブランドとしては異例のスタートで、国産GPUへの中国市場の関心の強さがうかがえます。

性能はRTX 3060相当との報告——RTX 4060対抗をうたうも価格はRTX 5060 Ti 16GBクラス

Lisuan Tech は LX 7G100 を NVIDIA の GeForce RTX 4060 対抗としてマーケティングしていますが、Tom's Hardwareによれば、レビューで実性能はRTX 4060に届かず、1世代前の GeForce RTX 3060 相当にとどまったと報告されています。最新世代の RTX 5060 と比べれば2世代分の差があるとの位置づけです。

価格面では GeForce RTX 5060 Ti 16GB と同等クラスに設定されており、性能と価格のバランスは厳しい評価となっています。それでも予約完売に至った点について Tom's Hardware は、「NvidiaとAMDが支配する市場における代替選択肢への消費者の関心と、新興の国産ブランドを支援する意欲」が背景にあると分析しています。

項目LX 7G100(Lisuan Tech)
MSRP(中国)$485(約7万6千円)
販売地域中国市場(JD.com 中心)
マーケティング上の対抗馬GeForce RTX 4060
レビュー上の実性能水準GeForce RTX 3060 相当との報告
価格レンジ感GeForce RTX 5060 Ti 16GB クラス

なお、レビュー結果は特定のテストタイトル・設定条件下での測定であり、ワークロードによって結果は変動し得ます。

限定1,000台のFounders Editionと6月18日の新製品ラインアップ

Lisuan Tech は NVIDIA の手法を参考に、LX 7G100 の Founders Edition も投入しました。初回ロットはわずか1,000台限定で、各カードには個別シリアルナンバーと共同創業者兼共同CEOの Xuan Yifang 氏のサインが入っているとされ、ほぼ瞬時に売り切れたと報じられています。

第2弾の Founders Edition は 6月18日 から出荷予定で、同日には新たな2モデルの正式発売も予告されています。

  • LX Pro:プロフェッショナル向けのエンジニアリング用途を想定
  • LX Ultra:クラウドコンピューティング向け

一方、クリエイター向けと位置づけられている LX Max は発売日未定とされており、ラインアップ全体の見え方は流動的です。これらの新製品の販売地域に関する明示的な記述はTom's Hardware上には確認できませんが、LX 7G100が中国市場(JD.com 中心)での販売である点を踏まえると、当面の展開地域は中国市場が中心となることが見込まれます。

S3 Graphics出身のシリコンバレー経験者が2021年に創業——だから何が読み取れるか

Lisuan Tech は2021年に Xuan Yifang 氏、Kong Dehai 氏、Niu Yixin 氏の3名によって設立されました。3氏はいずれも、かつて存在したグラフィックスチップ企業 S3 Graphics で働いていたシリコンバレー経験者だとTom's Hardwareは紹介しています。Tom's Hardwareは「動作するゲーミング向けGPUを2世代前のモデルと競合できる水準で投入するまでに、創業から5年を要した」と表現しており、3氏の経歴と現在の到達点を併せて評価する見方を示しています。一方で、実性能が2世代前相当にとどまっている事実とも併せて評価する必要があります。LX 7G100の予約完売はあくまでスタート地点であり、第2弾以降のレビュー評価と、6月18日に控える LX Pro/LX Ultra の実機評価が次の試金石となります。

買うべきか?性能とブランド支援のどちらを取るか

LX 7G100 は「性能で勝った製品」ではなく、「ストーリーと話題性で売れた製品」と位置づけられます。3万台超という数字は、性能ではなく国産ブランドを支援する消費者の関心と市場のタイミングが噛み合った結果と見られます。性能を重視するゲーマーが選ぶ製品かどうかは別問題で、購入を検討する場合はレビューで指摘されている RTX 3060 相当という実性能水準と、RTX 5060 Ti 16GB に近い価格設定を踏まえて判断するのが安全です。続報、特に6月18日の新製品出荷後の独立レビューを待ちたいところです。

TrueGPUアーキテクチャの正体——スペック詳細と国産エコシステムへの最適化

Lisuan Techが「TrueGPU」と呼ぶ独自アーキテクチャは、命令セット、演算コア、ソフトウェアスタックがすべて社内開発で構築されている点が大きな特徴です。AWE 2026で確定したLX 7G100のスペックは以下のとおりです。

項目仕様
メモリ12GB GDDR6
TMU / ROP192 / 96
インターフェースPCIe 4.0 x16
最大消費電力225W(8ピン×1)
FP32演算性能最大24 TFLOPS

これらのコアスペックはAWE 2026で公表されました。注目すべきは国産エコシステム対応で、Windows、Tongxin UOS、Galaxy Kylinに対応し、Hygon、Loongson、Zhaoxin、Phytiumという中国国産CPUの主要4プラットフォームと組み合わせて動作します。さらにLisuanは2026年4月にMicrosoft WHQLテスト認証を取得しており、エンタープライズ向けのドライバ品質保証が得られています。アップスケーリング面ではDLSSやFSRに対抗する独自アルゴリズム「NRSS」も自社開発しています。

実ゲーム性能の数字——RTX 4060との具体的な差とソフトウェアの課題

3DMark上ではRTX 3060前後に位置する一方、実ゲームでは差がより明確に出ています。BiliBiliのChaowankeによるFounders Edition実機レビューでは、次のような結果が報告されました。

  • Cyberpunk 2077(1080p / FSR3 Quality+FG): LX 7G100が88fps、RTX 4060が232fps、Intel Arc B580が243fps
  • Black Myth: Wukong: LX 7G100は56fps、RTX 4060は115fps
  • Forza Horizon 5(Lowプリセット): 48fps

ハードウェア自体がレイトレーシングに非対応で、Lisuanは次世代GPUでの対応を計画しています。ソフトウェア面の課題も指摘されており、スタッタリング、不均一なフレームペーシング、ほぼ空のドライバコントロールパネル、再起動後にリセットされるオーバークロック設定が報告されています。こうした状況を受けて、Lisuanは40タイトル分の公式推奨設定リストを公開し、グラフィックプリセット、APIモード、アップスケーリングオプションを提示しています。初回WHQLドライバは「v29.0.2260.76」として220MBで5月18日付で配信されました。

Q&A

Q. LX 7G100 はどれくらい売れたのですか? Tom's Hardwareによれば3万台超の予約を獲得したとされ(見出しでは「48時間で」と表現)、MSRP $485(約7万6千円)から計算すると予約販売額は約$14.55百万(約23億円)規模になります。中国大手EC JD.comの販売ランキングではすでに6位につけています。なお販売実績は中国市場での予約数値であり、出荷・最終販売台数とは異なります。

Q. RTX 3060相当でも買う価値はあるのですか? 純粋な性能対価格で見ると、価格がGeForce RTX 5060 Ti 16GBクラスに設定されている一方で実性能は1世代前のRTX 3060相当との指摘があり、コストパフォーマンス面では厳しい評価です。一方で「中国国産GPUを支援したい」「独立系の第3勢力に投資したい」という動機がある購入者にとっては、別軸の価値があると読めます。

Q. 日本から購入できますか? 公開情報の範囲では中国国内市場(JD.com 中心)での販売が前提として報じられており、日本を含む海外向けの公式販売チャネルや出荷予定については現時点では明らかにされていません。海外個人輸入の可否や保証・ドライバサポートの対応範囲についても情報は公表されていません。

Q. 次に控えている製品は? 6月18日にFounders Editionの第2弾出荷と合わせて、エンジニアリング向けの LX Pro とクラウドコンピューティング向けの LX Ultra が発売予定とされています。クリエイター向けの LX Max は発売日未定です。

出典