PCゲーマーを長年悩ませてきたシェーダーコンパイル待ちと初回スタッターを、配信側で精度高く解消する仕組みがいよいよ実用フェーズに入ってきました。Tom's Hardwareは、Microsoftの新機能「Advanced Shader Delivery(ASD)」をRadeon RX 9070 XTで6本のゲームを使い実測しています。結果はロード時間が最大95%短縮、1% Low FPSも最大33%改善という、体感に直結する大きな数字です。

Advanced Shader Deliveryとは何か

Advanced Shader Deliveryは、ゲームのダウンロードと同時に「事前コンパイル済みシェーダー」を配布し、ローカルでの長いシェーダー事前コンパイルとプレイ中の突発スタッターを抑え込もうとする仕組みです。鍵となるのは2つの新しいアセットで、ゲーム側でPipeline State Objects(PSO)の入力をプログラム的に収集して作る「State Object Database(SODB)」(SQLite3形式)と、それをオフラインコンパイラで処理して生成される「Precompiled Shader Database(PSDB)」がそれにあたります。

PSDBはGPUを実機で用意せずとも幅広いハードウェアを対象に作れるのが特徴で、Xbox storeがゲーム本体と並べて配信します。インストール後にXbox storeが追加でシェーダーを落としてくると、ゲームのShadersフォルダにSODBとPSDBが揃い、初回起動時にはコンパイル工程をスキップして起動できます。ドライバが更新されればシェーダーも自動更新される設計です。理論上は、SODBに必要なシェーダーが過不足なく集約されていれば、初回起動でPSDBの100%キャッシュヒットが期待でき、起動時間の短縮だけでなくプレイ中のシェーダーコンパイル由来スタッターも完全消滅し得るとされています。

動作条件:AMD RDNA 3/3.5/4+Windows 11 24H2以降

現時点でASDのパブリックプレビューは、デスクトップ向けのAMD GPU(dedicated/integrated)を対象に拡張されています。ただしAMD GPUを所有していれば誰でも使えるわけではなく、構成要件はかなり明確です。

  • OS: Windows 11 24H2 以降
  • Xbox Gaming Services: 37.113.11003.0 以降(Microsoft Store > Library > Update Gaming Services から更新)
  • Xbox Insider Hub: PC Gaming Preview への参加が必要
  • GPU: AMD RDNA 3 / RDNA 3.5 / RDNA 4 アーキテクチャ
  • ドライバ: Adrenalin 26.5.2 以降

配信先はXbox storeに限定されており、他ストアへの拡大は今後とされています。NVIDIAおよびIntel GPUへの対応も近いうちに予定されている旨が示されていますが、現時点ではこれらでは利用できません。なお、IntelはGPU側で「Precompiled Shader Distribution」という類似技術を持っています。ASDが正しく動作している場合、ゲームの起動ウィンドウ左下に「Precompiled shaders installed」と表示されます。

6本のゲームで実測:最大95%短縮・1% Lowも改善

テスト機はPowerColor Red Devil RX 9070 XTにRyzen 7 9800X3D、G.SKILL Flare X5 64GB(2x32GB)DDR5 6200MHz CL30、Crucial T700 Gen5 SSD、ASUS ROG STRIX B850-F Gaming WiFi、Corsair Nautilus 360 RS AIOという構成で、OSはWindows 11 25H2(Build 26200.8457)、ドライバはAdrenalin 26.5.2。設定は各ゲームごとに同一条件、ただし最大設定ではなくRX 9070 XTでプレイ可能な独自設定で計測されています。なお、ASDを公式に無効化する手段は提供されていないため、Shadersフォルダ内のファイルを削除した上でネット接続を切るという方法で「ASDオフ」状態を再現しています。ASDのサポート対象は30本余りで、ROG Allyで先行サポートされていた全タイトルとForza Horizon 6が含まれます。

各タイトルの結果は以下の通りです。

ゲーム初回ロード(ASD オフ→オン)改善率1% Low FPS/スタッター
Forza Horizon 648秒 → 2秒約95%序盤のスタッター解消
The Outer Worlds 22分52秒 → 9秒95%スタッターは元々なし
Ninja Gaiden 4事前コンパイルなし/変化なし1% Lowが約10%改善(戦闘中の小さなディップが消失)
Avowed約3分 → 短縮(2分16秒短縮)78%スタッターはオン/オフ共になし
Hogwarts Legacy1分超 → 短縮56%スタッターは発生せず
Silent Hill f事前コンパイルなし/変化なし町エリアのシェーダースタッターは解消されず

Forza Horizon 6では、ASDオフ時にプロローグ序盤で初回プレイ時に1% Lowが3FPSまで落ち込む強烈なスタッターが発生していましたが、ASDオンではこれが消えています。Tom's Hardwareは同じ系統の比較として、RTX 5090を載せた同一システムが同じ場面で激しいスタッターに見舞われるのに対し、9070 XT+ASDは初回からスムーズに通過する様子を示しています。これはGPU性能比較ではなく、シェーダーコンパイル由来のスタッターが最強クラスのGPUでも体感を一気に損ねうることを示すための例示です。NVIDIA GPUにも近い時期にASD相当の機能が来るとされている点を踏まえれば、この恩恵は将来的にNVIDIA/Intelユーザーにも広がる可能性があります。

一方でSilent Hill fのスタッターは消えませんでした。Tom's Hardwareは、APIの制約か、開発側がSODBに必要なシェーダーを揃え切れていないかのいずれかと推測しており、技術として有望ながら「すべてのゲームで一様に効くにはまだ作り込みが必要」という評価にとどめています。

ユーザーから見た意味と現状の判断

初回起動の数分待ちと序盤スタッターは、特に新作ローンチ直後の体験を大きく損ねてきた要素です。今回の結果は、その2つの不快要素を「タイトル次第ではほぼ消せる」段階に近づいていることを示しています。ロード時間の体感差は大きく、Forza Horizon 6の48秒→2秒、The Outer Worlds 2の2分52秒→9秒というのは、待っている間にスマホを開く必要すらなくなるレベルです。

ただし対象はXbox storeで配信されるASD対応タイトルに限られ、必要な環境もWindows 11 24H2+RDNA 3/3.5/4+Adrenalin 26.5.2以降+Xbox Insider HubのPC Gaming Previewと細かく指定されています。Steamなど他ストアへの拡大、NVIDIA/Intel GPUへの対応はいずれも今後とされており、現時点で広く全ユーザーが恩恵を受けられる機能ではありません。Silent Hill fのようにスタッターが残るタイトルもあり、Microsoftとゲーム開発者の双方による作り込みが今後の鍵になります。

条件を満たすRX 9070 XTユーザーであれば、Adrenalin 26.5.2への更新とXbox Insider Hubでの参加を済ませておき、対応タイトルでオン状態を試してみる価値は十分にあります。NVIDIA/Intel環境のユーザーは、対応アナウンスを待つのが現時点では妥当な判断です。

Q&A

Q. Advanced Shader Delivery(ASD)を使うために何が必要ですか? Windows 11 24H2以降、Xbox Gaming Services 37.113.11003.0以降、Xbox Insider HubのPC Gaming Previewへの参加、AMD RDNA 3/RDNA 3.5/RDNA 4のGPU、Adrenalin 26.5.2以降のドライバが必要です。配信ストアは現状Xbox storeのみで、対応タイトルは30本余りとされています。

Q. NVIDIA・Intelユーザーは今すぐ使えますか? 現時点では利用できません。NVIDIAとIntelのGPUにも近いうちにサポートが拡大される予定とされていますが、まだ提供開始時期は明らかにされていません。なおIntelはGPU側で「Precompiled Shader Distribution」という類似技術を持っています。

Q. ロード時間以外にどんな効果がありますか? タイトルによっては、シェーダーコンパイル起因のスタッター(1% Low FPSの一時的な落ち込み)が抑制されます。Ninja Gaiden 4では戦闘中の小さなディップが消え、1% Lowが約10%改善した一方、Silent Hill fのスタッターは解消されておらず、効果はタイトルの実装状況に左右されます。

出典