AMDがComputex 2026で、これまで中国市場限定だった「Radeon RX 9070 GRE」を世界販売に切り替えると発表しました。発売は2026年6月2日、価格は$549(約8万6千円)です。メモリ不足で$550未満のRDNA 4 GPUが市場から消えていた状況に、ようやく1440p性能を狙える正規ルートの選択肢が戻ってくる——これが読者にとっての最大の意味です。新規開発ではなく、既存SKUのグローバル投入でラインナップの空白を埋める動きとなります。

RX 9060 XTとRX 9070の隙間を埋めるポジション

Radeon RX 9070 GREは、Radeon RX 9070およびRX 9070 XTと同じ4nmプロセスの「Navi 48」シリコンを採用するRDNA 4 GPUです。差別化要素はCompute Unit(CU)の有効数で、性能差はここから生まれています。

モデルCU数メモリメモリ帯域TDP
Radeon RX 9070 XT6416GB GDDR6
Radeon RX 90705616GB GDDR6220W
Radeon RX 9070 GRE4812GB GDDR6432 GB/s220W

※ RX 9070 XT・RX 9070のメモリ帯域、およびRX 9070 XTのTDPは、Tom's HardwareによるGRE発表記事内では公表値として明示されていないため「—」としています。GRE単独の数値のみソースから確定値として掲載しています。

GREのCU数はRX 9070比で14%、RX 9070 XT比で約25%少ない設定です。メモリも12GB GDDR6と、他2モデルの16GBから25%減らされており、メモリインターフェースも192-bitに狭められています。これにより最大メモリ帯域は432 GB/sにとどまり、上位2モデルから32.5%低い水準です。一方でTDPはRX 9070と同じ220Wに据え置かれています。

AMDが主張する性能と独立レビューの所見

AMDは、Radeon RX 9070 GREがGeForce RTX 5060 Ti 16GBに対して1440p(2560×1440)ゲーミングで平均21%高速だと主張しています。テストはRyzen 7 9800X3Dを核とするハイエンドシステムで40タイトルを横断する形で実施されました。これはあくまでAMD自身による社内測定であり、独立した第三者検証ではない点には注意が必要です。

中国のテックメディアによる複数の独立レビューは、Radeon RX 9070 GREがGeForce RTX 5060 Ti 16GBより高速であることを裏付けつつ、GeForce RTX 5070には届かないとTom's Hardwareは報じています。つまりGREは「RTX 5060 TiとRTX 5070のあいだ」に位置づくRDNA 4製品ということになります。Tom's Hardwareも、最新ドライバを用いた自社レビューはこれから公開する方針だと述べており、グローバル市場向けの最終的な評価は今後の独立レビューを待つ段階です。

$549という価格に込められた戦術

注目すべきは価格戦略です。Radeon RX 9070 GREは$549(約8万6千円)でデビューしますが、これはRadeon RX 9070およびGeForce RTX 5070の本来のMSRPと同水準でもあります。性能で見ればGREはこの2モデルより低い位置にあるため、額面通りなら割高に映りかねません。

ところが現実の市場では、メモリ不足の影響でRX 9070とRTX 5070の実売価格は$599(約9万3千円)あたりからのスタートに押し上げられているとTom's Hardwareは伝えています。結果として「$550未満の選択肢」が市場から消える状況が生まれていました。AMDはこの空白に既存SKUを差し込む形で対応しており、新規開発に走らず手持ちのシリコンで穴埋めをする発想です。

歩留まり活用と市場ギャップ対応を同時に狙う「3段階目の救済SKU」

もう一段深く読むと、これはシリコン歩留まりを最大化する戦略の延長線上にも位置づけられます。Radeon RX 9070はRX 9070 XTの基準を満たさなかったダイを再利用するモデルで、GREはさらにそのRX 9070基準も満たさなかったシリコンを使う、いわば「3段階目の救済SKU」として設計されています。歩留まり活用と市場ギャップ対応を同時に解決する組み合わせ技と言えるでしょう。

AMD自社測定の「+21%」をどこまで信じるべきか

今回の情報はAMDがComputex 2026で公式に発表した一次情報であり、価格・発売日・スペックの主要項目については確定情報として扱える内容です。一方で「GeForce RTX 5060 Ti比+21%」という性能主張はAMD自社測定であり、独立第三者によるグローバル市場向けレビューはこれから出てくる段階です。1440pの平均値という設定上、個別タイトルでの優位幅やレイトレーシング時の挙動は別途検証が必要になります。

メモリ不足の状況も短期的に改善が見込みにくいとTom's Hardwareは伝えており、$549というMSRPが実売でどこまで維持されるかも今後の焦点です。RTX 5070が$599から動かないのであれば、GREの相対的なコストパフォーマンスは保たれますが、GRE側も需給次第で上振れする可能性は残ります。

購入検討段階のユーザーにとっての結論はシンプルです。1440pでRTX 5060 Tiクラスより一段上、RTX 5070未満の性能を、現状で唯一$550近辺のMSRPで狙える選択肢として位置づくのがRadeon RX 9070 GREです。最終判断は、6月2日以降に出てくる独立レビューと実売価格の推移を見てから下すのが妥当と言えるでしょう。

エントリー帯を埋める「Radeon RX 9050」の存在も浮上

RDNA 4のラインナップ整備はGREだけにとどまらない見通しです。Tom's HardwareやKitGuruなど複数メディアは、AMDがNavi 44ダイを用いたエントリー向け「Radeon RX 9050」を準備していると報じています。GeForce RTX 5050への対抗を意識した位置づけです。

リークで伝えられているRX 9050の主なスペック

  • ストリームプロセッサ数: 2048基(RX 9060の1792基を上回る)
  • ゲームクロック1920MHz / ブーストクロック2600MHz
  • メモリ: 8GB GDDR6(18Gbps・128-bit)
  • 推奨電源: 450Wクラスの低消費電力帯
  • 想定価格帯: £200〜250(英国市場ベース)

AMD自身はまだ存在を公式に認めていませんが、AIBパートナー筋の情報としてComputex 2026前後でのお披露目が見込まれています。RX 9070 GREが$549帯を埋める一方、エントリー帯ではRX 9050が控えるという2層構造でRDNA 4の隙間が塞がれていく流れです。

$549維持を左右するGDDR6/GDDR7の需給構造

GREの$549というMSRPが実売でどこまで持つかを読むうえで、2026年に入って一段と強まったGDDR6/GDDR7の需給逼迫は外せない論点です。Astute Groupによれば、DRAMはグラフィックスカード製造原価の最大80%を占め、メモリ単価の振れがそのまま小売価格に反映されやすい構造があります。AI関連需要は2026年の世界DRAM出荷量の約20%を吸収する見通しで、メモリ各社はHBMやサーバーDRAMへ生産能力を再配分中です。

項目2026年の動き
AMDの値上げ開始2026年1月から段階的に実施
NVIDIAの値上げ開始2026年2月から追随
新規DRAM増産の効果2027年以降と見られる
DRAMが原価に占める割合最大80%(Astute Group)

値上げは一度きりではなく数か月にわたり繰り返される可能性も伝えられており、GREも需給次第で実売が押し上げられる余地が残ります。

Q&A

Q. Radeon RX 9070 GREは日本でも買えるのですか? AMDはグローバル展開を発表していますが、地域別の販路や日本での正式価格は現時点では明らかにされていません。$549(約8万6千円)はあくまでグローバルMSRPであり、為替・流通マージン・メモリ需給の影響を受ける可能性があります。

Q. RX 9070 GREとRX 9070、どちらを選ぶべきですか? RX 9070は56 CU・16GB GDDR6を備え、GREより上位の性能を持ちますが、メモリ不足の影響で実売は$599(約9万3千円)前後からと伝えられています。目安として、価格差が$30以内に収まる場合はRX 9070、$50以上の価格差が安定して維持される場合はGREが選択肢になります。1440pまでの用途であればGREの12GBでも実用上の不足は出にくいでしょう。

Q. GeForce RTX 5070と比べてどうですか? 中国のテックメディアによる独立レビューでは、Radeon RX 9070 GREはGeForce RTX 5060 Ti 16GBより高速だが、GeForce RTX 5070には届かないと評価されているとTom's Hardwareは報じています。MSRPは同じ$549ですが性能ポジションが異なるため、RTX 5070が定価で買える環境ならRTX 5070、メモリ不足の影響で$599以上に張り付くようならGREというすみ分けになります。

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