買い物かごがサイト側からユーザー側へ逆転する——Googleが、Search・Gemini・Gmail・YouTubeを横断する新しいAIショッピング機能「Universal Cart」を発表したと、Android Authorityが報じています。Nike・Sephora・Target・Walmartなど8社以上の初期対応マーチャントが挙げられており、米国では今夏から検索とGeminiアプリで先行展開されると伝えられています。複数サイトを行き来してカートを管理する手間が消え、買い物の途中での「部品が合わない」「気付かず高値で買う」といった失敗をAIが先回りで止める設計が特徴です。

買い物かごがGoogle側に移る——サービス横断の新発想

Universal Cartは、Googleが「インテリジェントカート兼エージェント型ショッピングハブ」と説明している新機能だと伝えられています。最大の特徴は、特定のECサイトに紐づかず、Googleのサービス群を横断して使えることにあります。

例えばGeminiと「サッカーを始めたいので必要な道具を教えて」と会話している最中に、提案された商品をそのままカートに追加できるとされます。検索結果を眺めながら気になった商品を追加することも、Gmailで受け取ったメール内の商品を取り込むことも可能とされています。これまでショッピングサイトごとに分断されていた「買い物かご」を、ユーザー側に紐づける形に逆転させる発想と読めます。

対応マーチャントとして、Nike、Sephora、Target、Ulta Beauty、Walmart、Wayfair、さらにShopifyベースのFentyやSteve Madden などが初期段階で挙げられています。最終的な決済は、希望すればマーチャント側のサイトに商品を引き継いで完了させることも可能とされています。

PCパーツの「互換性ミス」をAIが止める——価格追跡も自動化

Universal Cartは単なる「保存場所」ではなく、入れた商品に対してAIが能動的に動く点が大きな特徴とされています。

カートに入った商品について、Googleは値下げや在庫状況を継続的にチェックすると説明していると報じられています。具体的には、以下のような動作が想定されています。

  • カート内の商品に対してより安い販売チャネルや値下げを探す
  • 価格履歴を提示する
  • 在庫切れだった商品が再入荷した際に通知する

さらに「インテリジェント推論」と呼ばれる機能では、ユーザーの目的を踏まえて先回りした提案が行われるとされます。例として挙げられているのは自作PCのケースで、複数の販売店からパーツをカートに集めた際、Universal Cartが「これらの部品は互換性がない可能性がある」と指摘し、代替パーツを提案する動作です。買い物の途中で発生しやすい失敗を、決済前に止めることを狙った設計との見方もあります。

UCP・決済基盤に続く第3ピース——エージェント型ショッピング戦略の集大成

今回の発表は、Googleが2026年初頭から進めてきた一連の取り組みを束ねるものでもあると伝えられています。同社は今年に入り、AIエージェントが自律的にショッピング処理を行うための共通言語「Universal Commerce Protocol(UCP)」を公開しました。続けて、エージェントによる決済を円滑にするための新しい決済インフラも導入しています。

一方で、エージェント型ショッピングをめぐっては米国の議員から懸念の声も上がっていると報じられており、規制側の視線が向けられている領域でもあります。そうした文脈の中で、UCP・決済基盤・Universal Cartがエンドユーザー向けのフロントエンドとして一つにつながった形です。

検索・Geminiアプリ・Gmail・YouTubeという、Googleが押さえている主要な「ユーザー接点」のすべてに同じカートが乗ることになるため、商品との出会いから比較・購入までを同一の体験内で完結させる狙いがあるとの見方もあります。

米国在住なら今夏試せる——日本ユーザー向けの行動指針

現時点でアナウンスされているのは米国向けの展開で、検索とGeminiアプリで今夏スタート、YouTubeとGmailは時期未定で追従するというロードマップだと報じられています。日本を含むその他地域での提供時期や対応マーチャントについては、現時点で公表されていません。

Universal Cartは「個別のECサイトをまたいで一括管理する」「価格や在庫を自動で追う」「組み合わせの問題を事前に警告する」という、買い物の面倒な作業をAI側に寄せる思想で組まれた機能です。米国在住で対象マーチャントを利用しているなら、今夏のロールアウト後にまず検索かGeminiアプリから試すのが入口になります。日本ユーザーは、国内ECやAmazon・楽天などの類似機能(カート横断管理・価格追跡・互換性チェック)の動向をウォッチしつつ、議会側の規制議論の行方を見ておくと、本機能が日本に届いた時の判断材料になります。

UCPの国際展開とカテゴリ拡張——日本上陸前に押さえたい広がり方

Universal Cartを支える基盤であるUCP(Universal Commerce Protocol)は、米国外への展開と業種拡大が同時に動き出しています。Googleは、UCPを用いた決済体験をカナダとオーストラリアへ今後数か月以内に拡大し、その後英国にも広げる計画を示しているほか、UCPを米国内でYouTubeにも提供し、ホテル予約やローカルフードデリバリーといった新しい業種にも広げていくとしています。

採用パートナーの広がり

UCPは単独の規格ではなく、すでに大手リテーラーと決済事業者が名を連ねる業界連合になっています。

  • 共同開発パートナー: Shopify、Etsy、Wayfair、Target、Walmart
  • 支持企業(20社超): Adyen、American Express、Best Buy、Flipkart、Macy's Inc、Mastercard、Stripe、The Home Depot、Visa、Zalando ほか

技術面では、UCPはAP2による安全なエージェント決済と連携し、API・Agent2Agent(A2A)・Model Context Protocol(MCP)など複数の方式で接続できる柔軟性を持っています。日本へ到達する前にどのカテゴリ・国から先に開かれるかを示す重要な手がかりです。

AP2と「先行する競合の失敗」——エージェント決済の現実

Universal Cartの裏側で動くのが、エージェントによる決済を担うAP2(Agent Payments Protocol)です。Google I/Oでは、ユーザーが欲しいブランドや商品、支出上限を指定するといったガードレールを設定でき、その条件を満たした際にエージェントが自動で購入を実行する仕組みが示されています。

GoogleはAP2を今後数か月で自社プロダクトに展開し始め、Gemini Sparkパーソナルエージェントから着手するとしています。

ただし、エージェント型決済そのものは順風満帆ではありません。OpenAIは2025年に同様のチャット内購入機能を発表したものの、その後ネイティブ決済から後退し、ユーザーをリテーラーサイトへ戻す方式に切り替えています。Gartnerアナリストは、取引を成立させる難しさを過小評価していたとCNBCに語っています。同じ轍を踏まないため、Googleは決済基盤と監査可能性の整備を先行させた格好です。さらにUniversal CartはGoogle Wallet上に構築されているため、支払い方法の特典やロイヤルティ情報、マーチャントオファーを把握し、隠れた割引やポイントを自動で提示できる点が、単なる「決済代行」との差別化要素になっています。

Q&A

Q. Universal Cartはいつから使えますか? 米国では2026年夏に、Google検索とGeminiアプリで展開が始まると報じられています。YouTubeとGmailは、その後のタイミングで追従するとされています。日本での提供時期は現時点で公表されていません。

Q. どのお店の商品をカートに入れられますか? 初期対応マーチャントとして、Nike、Sephora、Target、Ulta Beauty、Walmart、Wayfair、さらにShopify上のFentyやSteve Maddenなどが挙げられています。決済はそのままGoogle側で進めることも、マーチャントのサイトに引き継ぐことも可能とされています。

Q. AmazonアカウントやAmazonでの買い物との関係はどうなりますか? 現時点で公表されている初期対応マーチャントにAmazonは含まれておらず、両者の連携や棲み分けに関する情報は明らかにされていません。利用する場合は、Universal Cart対応マーチャントとの併用が前提になります。

出典