Apple TVの国際展開に何が起きているのでしょうか。約1か月のうちに、国際コンテンツ部門から2人目となる幹部の離脱が報じられました。今回退任するのは国際開発責任者を務めるMorgan Wandell氏で、競合への移籍ではなく自身の制作会社「Kismet」を立ち上げるとされています。

1か月で2人目──Apple TV国際コンテンツ部門の動揺

数週間前にはTHRが、Apple TV幹部のOliver Jones氏がAmazon MGM Studiosへ移り、英国のスクリプテッドコンテンツ部門を率いると報じていました。Jones氏は過去6年にわたりApple TVに在籍し、Masters of the Air、Disclaimer、Monarch: Legacy of Monstersといった作品に携わってきた人物です。

そして今回、DeadlineはApple TVのHead of International Developmentを務めるMorgan Wandell氏も同社を離れると伝えています。1か月のうちに国際コンテンツ部門の主要幹部が2人続けて退社する形となり、Apple TVの国際展開戦略に少なからぬ影響を与える動きとして注目されています。

Amazon・ABC出身のWandell氏、独立して何を作るのか

Wandell氏は2017年にAppleに加わった人物です。Apple入社以前はAmazon Studiosで国際向けオリジナルコンテンツの開発を率い、さらにその前はABC Studiosに在籍していました。Apple TV在籍中は、以下の作品に関与してきたとDeadlineは伝えています。

  • Tehran
  • Acapulco
  • Masters of the Air
  • Disclaimer
  • Monarch: Legacy of Monsters
  • The New Look

新会社Kismetはロサンゼルスを拠点に、グローバル市場を狙ったプレミアムなスクリプテッドシリーズを開発・制作する方針です。Deadlineによれば、文化的なルーツを持ちつつ国境を越えて通用するハイエンドなストーリーテリングを軸に、企画と作り手を発掘・育成していくとされています。

Based in Los Angeles, Kismet will be developing and producing premium scripted series aimed at the global marketplace by finding and nurturing projects and voices that can travel through high-end culturally rooted storytelling.

体制再編──Cherniss氏とHunt氏が役割拡大

Wandell氏の退任に伴い、Apple TVは社内体制を見直します。Deadlineが伝える新体制は以下の通りです。

担当者役職新しい担当範囲
Matt ChernissHead of Programming and Domestic DevelopmentWandell氏が担当していた作品を引き継ぐ
Jay HuntCreative Director for Europe国際および現地言語のオリジナル作品全般へ役割拡大

Cherniss氏はすでにTed Lasso、Severance、The Studio、Pluribusなどを統括しており、今回の引き継ぎでさらに担当範囲が広がります。Hunt氏はSlow HorsesやHijackといった作品を手掛けてきた人物で、欧州の枠を超えて国際オリジナル全体を見る立場になります。

短期間に主要幹部2人が離脱した一方で、社内人材の役割拡大で対応する形となっています。なお、Apple TVは月額$12.99(約2,000円)で提供されており、Severance、The Studio、The Morning Show、Shrinking、Siloといったヒット作品を擁しています。今後注目すべきポイントは、Cherniss氏とHunt氏の体制下で発表される新たな作品ラインナップ、そして国際向け企画のグリーンライト判断の傾向です。Apple TVの国際戦略がどのように再構築されていくのか、続報に注目したいところです。

背景にある「Apple TV+」から「Apple TV」への大規模リブランド

今回の幹部離脱の背景には、サービス自体の大きな転換があります。2025年10月、AppleはストリーミングサービスApple TV+を「Apple TV」へとひっそりリブランドし、ブラッド・ピット主演のF1: The Movieの配信開始日(12月12日)を告知するプレスリリースに紛れ込ませる形で発表しました。

新ロゴとイントロ音の刷新

公式サイトのApple TV+ページはApple TVに更新され、レインボーカラーのアニメーションロゴと、Finneasが作曲したサウンドを使った短いYouTube動画も公開されました。表記の更新はiOS 26.1、iPadOS 26.1、tvOS 26.1、macOS Tahoe 26.1のアップデートで段階的に反映される見込みです。サービス担当上級副社長のEddy Cue氏は「ハードウェアはApple TV 4K、アプリはApple TVと呼ばれている」と説明し、混乱は問題にならないとの見解を示しています。国際展開の主要幹部2人の離脱は、こうしたブランド再構築のタイミングと重なる形で起きています。

2026年のコンテンツ計画とWandell氏の「半離脱」の実態

体制変更の影響を読み解くうえで、2026年のラインナップ計画と、Wandell氏の今後の関与にも触れておく必要があります。

項目内容
2026年の新作頻度ほぼ毎週新作オリジナルを投入
名前が挙がった続編Ted Lasso、For All Mankind
広告付きプラン現時点で導入予定なし
Wandell氏の今後一部既存プロジェクトのプロデューサーとして残る交渉中

Worldwide Video責任者のZack Van Amburg氏はScreen Internationalのインタビューで「2026年はほぼ毎週新作オリジナルがある」と語り、Ted LassoとFor All Mankindの新シーズンが予定されていることに言及しました。一方、多くの競合が広告付きプランを導入するなか、Cue氏はAppleには現時点でその計画がないことを明言しています。また、Wandell氏は経営幹部の役職を離れるものの、既存プロジェクトの一部にプロデューサーとして残る方向でAppleと協議中とされています。新会社Kismetの経営陣と初期の作品ラインナップは後日発表される予定です。

Q&A

Q. この離脱はSeveranceなど人気作の続編に影響するのですか? Severance、Ted Lasso、The Studio、PluribusなどはもともとMatt Cherniss氏が統括する作品群で、今回の体制変更でも担当者は変わりません。Wandell氏が担当していた国際色の強い作品群がCherniss氏に引き継がれる形となります。

Q. Wandell氏は競合企業に移籍するのですか? いいえ。競合への移籍ではなく、自身の制作会社「Kismet」をロサンゼルスで立ち上げるとDeadlineは伝えています。グローバル市場向けのプレミアムなスクリプテッドシリーズを開発・制作する方針です。

Q. Wandell氏が手掛けていた作品は今後どうなりますか? Apple TVのHead of Programming and Domestic DevelopmentであるMatt Cherniss氏が引き継ぎます。Cherniss氏は既にTed LassoやSeveranceなどの作品を統括しています。

出典