最高裁の執行停止却下からわずか数週間後——Appleは今月、Epic Games訴訟で連邦最高裁に正式な上告請願を提出しました。App Store外部決済をめぐる「侮辱(contempt)」認定と、差止命令の対象範囲という2つの論点を争う内容で、判断次第ではApp Store経済圏の手数料枠組みが大きく揺らぐ可能性があります。最高裁は夏季休廷前に受理の可否を判断する見通しです。

iPhone・iPadを使う読者や国内のApp Store向け開発者にとって、結論が出るまでは即時の変化はありません。ただし「Appleが外部リンク経由の購入にどこまで手数料を課せるのか」というルールそのものが争点であるため、サブスクや課金アプリの収益設計に長期で影響し得る重要局面です。

Apple、最高裁に正式な上告請願を提出

Appleは、Epic Games訴訟における下級審の判断を覆すよう連邦最高裁に求めました。同じ訴訟をめぐっては、今月初めにAppleの**執行停止申立て(stay request、訴訟手続を一時停止させる緊急申立て)**を最高裁が却下したばかりで、その直後の正式な上告請願となります。

紛争の起点は2020年です。EpicがFortniteの審査通過後にサーバーサイド更新でAppleのIn-App Purchase(IAP)を回避し、AppleがゲームをApp Storeから即時に削除、Epicが提訴しました。多くの争点で裁判所はEpicの広範な独占禁止法上の主張を退けましたが、2021年に1点だけEpicが勝訴しています。「開発者がユーザーに対し、IAP以外の外部決済オプションへ誘導することをAppleが妨げてはならない」という**差止命令(injunction、特定行為の禁止・強制を命じる裁判所命令)**です。

Appleは外部リンクを許容する一方で新たな手数料・制限を課しましたが、Epicがこれを再び争い、カリフォルニア北部地区連邦地裁はAppleが当初の差止命令に従っていないとして「侮辱(contempt、裁判所命令違反に対する認定)」と判断しました。Appleの控訴を受けた第9巡回区控訴裁判所は、地裁の「いかなる手数料も課せない」とした全面禁止部分は破棄したものの、侮辱認定自体は維持。事案はApp Store外購入に対してAppleが取れる手数料水準を決めるため、地裁に差し戻されています。

手数料は禁止されていないのに「侮辱」?Appleの反論ロジック

今回の上告請願でAppleが最高裁に判断を求めているのは、次の2点です。

  1. 侮辱認定の妥当性:当初の差止命令は「外部購入への誘導ボタン・リンクなどをAppleが禁止すること」を防ぐものであり、外部購入に対する手数料そのものは差止命令の文言で禁じられていません。Appleは「裁判所命令は、当事者が侮辱に問われる前提として、対象行為を明確かつ曖昧さなく禁止していなければならない」と主張します。第9巡回区は文言に手数料への言及がないと認めつつ、差止命令の**「精神(spirit)」に反した**として侮辱認定を維持しており、Appleはこの論理を問題視しています。

  2. 差止命令の対象範囲:差止命令は、米国App Storeに登録するすべての開発者(世界中)に適用されており、Epicと無関係な開発者やEpicの競合企業まで対象になっているとAppleは指摘しています。「民事侮辱判決は訴訟における重大な進展であり、将来の命令に悪影響を及ぼし得る」とも改めて述べています。

2025年新判例が突き崩す“全世界差止命令”の根拠

Appleが対象範囲の論点で根拠としているのが、2025年の連邦最高裁判決「Trump v. CASA」です。この判決は、連邦裁判所が訴訟当事者を超えて広く適用される差止命令(universal injunction)を発する能力を制限したものとされています。

Appleは、第9巡回区がEpicの連邦反トラスト法上の主張が認容されなかったにもかかわらず、競争法分野について事実上「CASA判決の例外」を作り出していると主張しています。最高裁は2024年にApple・Epic双方の上告を不受理としており、また今月にはAppleの執行停止申立ても却下しています。ただし執行停止は「回復不能な損害」の立証が求められる緊急救済であり、今回の上告請願は事案そのものを審理対象とすべきかを問う性質の異なる手続です。Appleはこの違いと、第9巡回区の最新判決を踏まえれば、最高裁が改めて検討に値すると判断する可能性があると見ているとされます。

Epic Gamesの反論と今後のスケジュール

9to5Macに寄せられたEpic Gamesのコメントでは、Epicは今回の上告請願について、最高裁はすでにAppleの差止命令撤回の試みを退けており、今回の侮辱命令への挑戦は決済競争が消費者の利益のために開かれることを遅らせるための試みだと位置づけています。さらにEpicは、裁判手続とApple自身の文書から、Appleが地裁命令への偽装的なコンプライアンス(sham compliance)を意図的に設計したことが明らかだとも主張しています。

AppleとEpicは**迅速審理スケジュール(expedited schedule)**で合意しているため、最高裁は夏季休廷前に上告受理の可否を判断する可能性があると報じられています。

iPhone・iPadユーザーや国内のApp Storeアプリ開発者にとって、現時点では即時の影響はありません。ただし最高裁が上告を受理し、侮辱認定や差止命令範囲の判断が見直されれば、App Store外決済をめぐる手数料の枠組みは大きく変わり得ます。続報を待ちたいところです。

Q&A

Q. AppleがIAP外部決済に課そうとしている手数料の水準は? 公開情報の範囲では具体的な手数料率は明らかにされていません。第9巡回区は地裁の「いかなる手数料も課せない」とした全面禁止を破棄しており、Appleが取れる手数料水準は地裁に差し戻されて審理中です。

Q. 最高裁が判断を下すのはいつごろですか? AppleとEpicが迅速審理スケジュールで合意しているため、夏季休廷前に受理の可否が判断される可能性があると伝えられています。受理された場合の本案審理はその後です。

Q. 不受理になった場合、Appleはどこまで現状を維持できますか? 不受理となれば、侮辱認定および差止命令はそのまま維持され、地裁での手数料水準の審理が継続します。Appleにとっては外部決済への手数料設計を、地裁判断の枠内で再構築せざるを得ない展開となります。

Q. ユーザーや国内開発者にすぐ影響はありますか? 現時点で即時の影響はありません。受理して下級審の判断が見直される場合に限り、App Store外決済の手数料・運用に影響する可能性があります。

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