2025年だけで5億件超のアップロード——これは、約2億人近いユーザーを抱えるStravaに記録された筋トレアクティビティの数です。ランニングとサイクリングの定番アプリだったStravaが、ついに筋力トレーニング体験を全面的に刷新します。セット数・レップ数・重量を細かく記録できるワークアウトログ、自動生成される筋肉マップ、そして14社の新たなパートナー連携が一気に投入され、「足と自転車のアプリ」から「筋トレも本気で記録できるハブ」へと舵を切ります。
ランニング偏重のStravaが「筋トレ」に本腰を入れる理由
Stravaは約2億人近いユーザーを抱える大規模プラットフォームですが、これまでランニング・ウォーキング・ハイキング・サイクリングといった「足と自転車のスポーツ」が中心で、筋トレや球技、水泳、ウィンタースポーツなどはサポートはされているものの機能は限定的でした。
今回の方針転換の背景にある数字が、2025年だけで5億件を超える筋トレアクティビティの記録です。同社は筋トレを「最も成長スピードの速いスポーツタイプのひとつ」と位置付けており、ユーザーからの要望に応えるかたちで本格的なテコ入れに踏み切りました。
StravaのChief Product OfficerであるMatt Salazar氏は、次のようにコメントしています。
筋トレはStravaにおいて長らく最も急成長しているスポーツタイプのひとつであり、2025年だけで5億件を超えるアップロードがありました。コミュニティの要望は明確でした。今回の刷新によって、Stravaならではの深さ・モチベーション・シェアの楽しさを、さまざまな筋トレ活動に届けます。
ランニングや自転車に並ぶ「主軸スポーツ」として筋トレを扱うという、明確な舵切りです。
ランニングの「記録体験」が、そのまま筋トレに来る
刷新の中心となるのは、3つの新しい機能群です。いずれも「ただ機能が増えた」ではなく、ランニングで慣れ親しんだ記録・可視化・シェアの体験を、そのまま筋トレに持ち込むという発想で設計されています。
- ワークアウトログツール: セット・レップ・重量を動的に記録でき("dynamically record sets, reps, and weight")、過去のセッションを振り返って同じメニューを繰り返すのも容易になります。「先週のスクワットは何kg×何レップだったか」をアプリ内で即座に呼び出し、今日のメニューに反映できるイメージです。
- 自動生成の筋肉マップ: トレーニング内容に応じて、どの筋肉群を鍛えたかを視覚的にハイライト表示します。手動でタグ付けする必要がなく、セッション後に自動でビジュアル化されるため、部位バランスの偏りが一目で分かるようになります。
- 筋トレ専用の新シェアフォーマット5種: ランニングのペースや距離をシェアする感覚で、自分のリフトや進捗を友人やクラブ、Stravaコミュニティに共有できます。ベンチプレスのPB更新を、5kmランの自己ベスト更新と同じテンションで投稿できる、という体験です。
「記録する楽しさ」と「シェアする楽しさ」をランニング並みに引き上げるという、Stravaらしいアプローチです。
14社の連携で「他アプリ・他デバイス」とのデータ往来が一気に拡大
今回の刷新では、外部アプリやデバイスとの統合も大幅に強化されます。新たに対応するのは以下の14社です。なお「種別」は、本記事で読者の判断材料として整理した分類であり、Stravaが公式に区分しているものではありません。
| 種別 | 連携先 |
|---|---|
| フィットネスクラブ | 24 Hour Fitness(this summer開始予定) |
| ウェアラブル | Amazfit、COROS、Garmin、WHOOP |
| アプリ連携 | Caliber、Fitbod、Hevy、iFIT Personal Trainer、JEFIT、Liftoff、Motra、REMAKER、Runna |
Garmin・WHOOP・COROSといった主要ウェアラブルとの連携が同時に強化される点は、すでに別の計測デバイスを使っている読者にとって特に大きな意味があります。Stravaを「複数アプリを束ねる筋トレのハブ」として使える可能性が出てきたかたちです。
これまで「ランニングはStrava、筋トレは別アプリ、シェアはまた別」と分散していた動線が、Stravaに集まる方向に動くということです。各パートナーとの具体的な連携内容や同期される項目については、現時点では詳細が明らかにされていないため、公式発表や各アプリ側の対応状況を順次確認することになります。
なお、24 Hour Fitnessとの連携は「this summer」(今夏)の開始予定とされており、その他のパートナーとの統合も含めた全体のロールアウトは「in the coming weeks」、つまり今後数週間でグローバルに展開される見込みです。展開時期は段階的になる可能性があるため、自分の使っているデバイス・アプリの対応状況は順次確認することになりそうです。
「筋トレも続けて記録したい」読者の判断軸
すでにランニングや自転車でStravaを日常的に使っている人にとって、今回のアップデートは別アプリに分散していた筋トレログをStravaに統合できるチャンスです。とくにGarminやWHOOPですでに筋トレを記録している人は、ロールアウト後に連携設定を見直す価値があります。
一方、現在他の筋トレ専用アプリを愛用していて記録の細かさに満足している人は、Strava側のワークアウトログがどこまで自由度の高い記録に対応するか、実際にリリースされてから判断するのがおすすめです。展開は今後数週間で順次行われるため、まずは自分のアカウントで新UIが利用可能になるのを待ち、慣れているアプリと連携させて両方の良さを残す形を検討するのが現実的でしょう。
IPO準備期と重なる「筋トレ投資」——プレミアム不要で全ユーザーに開放
今回の刷新は単発のアップデートではなく、Stravaが本格的な事業拡大フェーズに入ったタイミングと重なります。Stravaは2026年2月2日に米国でのIPOを機密申請しており、Goldman Sachsと協業していると報じられています。上場準備を進めるなかで成長領域へ投資する姿勢が、今回の筋トレ強化にも色濃く反映されています。
「最初の一歩」と位置付けられた投資
Stravaは今回の発表を、筋トレ体験への大規模投資の「最初の一歩」と位置付けています。さらに健康全般・長寿・怪我予防が筋トレ活動の伸びを支える主な動機だとし、人々がなぜどう動くかを製品に反映し続けるとしています。
ビジネス上の注目点として、この新機能は全アカウントで利用可能で、有料プレミアムの契約は不要です。課金ユーザーに限定せず利用層を一気に広げる設計で、筋トレユーザーの取り込みを加速する狙いが見えます。
5月の刷新に先行していた3月のアップデート——多様化する記録対象
筋トレ機能の刷新は突然の方向転換ではなく、年明けから段階的に進んできた製品ロードマップの延長線上にあります。2026年3月時点で、Stravaはバスケットボール、バレーボール、ダンス、パデル、クリケットの5競技をアプリ内から直接ログできるようにしています。同じタイミングで筋肉マップ機能のテスト展開も始まっており、全ユーザーへの段階的なロールアウトが進められていました。
一方でAI関連機能には現時点で線引きが残っています。
| 機能 | 対応スポーツ |
|---|---|
| Athlete Intelligence(AI要約) | ラン、トレイルラン、ライド、グラベルライド、MTBライド、ウォーク、ハイク |
| 筋肉マップ・ワークアウトログ | 筋トレ(今回追加) |
Athlete Intelligenceは活動データを生成AIで分析して要約を提示する機能ですが、対応スポーツは持久系中心にとどまります。筋トレがAI分析の対象に組み込まれるかどうかが、次の注目ポイントになりそうです。
Q&A
Q. 新しい筋トレ機能はいつから使えますか? Stravaは「in the coming weeks(今後数週間)」のうちにグローバルへ順次展開するとしています。連携パートナーのうち24 Hour Fitnessは今夏の開始予定で、他のアプリ・デバイスとの統合も段階的に有効化されると見られます。
Q. どのウェアラブルが対応しますか? 新たに連携が追加されるのは、ウェアラブル系ではAmazfit、COROS、Garmin、WHOOPの4社です。加えてCaliber、Fitbod、Hevy、iFIT Personal Trainer、JEFIT、Liftoff、Motra、REMAKER、Runnaといったアプリも対象で、合計14社の連携が同時に強化されます。
Q. Strava単体でも筋トレを細かく記録できますか? 新しいワークアウトログでセット・レップ・重量を動的に記録でき、過去セッションの振り返りや繰り返し、筋肉マップの自動生成といった基本機能はStrava単体で完結します。Strava側のワークアウトログが、他の筋トレ専用アプリの記録機能とどこまで同等の自由度を備えるかは、現時点では明らかにされていません。専用アプリの細かい記録に慣れている人は、まずはStravaとの連携でログを集約し、専用アプリと併用する形が現実的です。
