折りたたみの次は「巻き取り」か——。Samsungがロール式ディスプレイを採用したスマートフォンの新たな特許を米国特許商標庁(USPTO)に出願したと、WearViewの発見をもとにAndroid Authorityが報じています。提出された図面には、画面を引き出して拡張するコンセプトが2種類描かれており、記者のAkshay Gangwar氏は仮称として「Galaxy Z Roll'd」というジョークを添えるほど、独創的な発想が並んでいます。なお、現時点で商品化の予定は公表されていません。

Samsungが描く「巻き取り型」スマホの背景

Samsungは Galaxy Fold で折りたたみスマホをいち早く市場に投入した企業として知られ、現在は Galaxy Z Fold シリーズと Galaxy Z Flip シリーズを展開しています。立ち上がり時の評価は決して順風満帆ではなかったものの、両シリーズは折りたたみ市場で広く受け入れられてきました。

ロール式(巻き取り式)ディスプレイ自体は目新しいコンセプトではなく、MWCやCESといった大型イベントで複数のメーカーが試作機を披露してきた領域です。Samsung自身も過去にスライド式コンセプト機を公開しており、今回の特許出願はその延長線上に位置づけられる動きと言えるでしょう。

アイデア①:横に引き伸ばせる「スライド拡張型」

図面から読み取れる1つ目のコンセプトは、外観こそ通常のスマートフォンに近い形状ですが、画面の端を引っ張ると本体ごと横に広がる仕組みになっています。引き出した状態は通常の Galaxy S26 というより Galaxy Z Fold 7 に近いサイズの大画面になる、と Android Authority は表現しています。

折りたたみ機構のヒンジを介して画面を「広げる」のではなく、ディスプレイそのものを「引き出す」発想が特徴です。閉じた状態ではコンパクトな1枚板のスマホとして使え、必要なときだけ画面を拡張できる——という使い分けを狙った設計と読み取れます。

アイデア②:閉じると画面が完全に隠れる「二分割収納型」

さらに興味深いのが2つ目のアイデアです。図面によれば、本体は2つのパーツに分かれており、閉じた状態ではディスプレイが完全に隠れる構造になっているとされています。Android Authority によれば、Samsungはこの設計について「ディスプレイモジュールへの損傷を低減する」ことを目的としていると伝えられています。

両端を引っ張るとディスプレイがスライドして現れる仕組みで、本体内部にはディスプレイがどれだけ引き出されたか、どの程度の速度で引き出されたか等を検知するセンサーが組み込まれる予定だと報じられています。これらの情報をUI・アプリ表示の最適化に活用する設計のようです。

閉じた状態で画面が筐体内部に収まるという特徴は、ポケットに入れたまま鍵や小銭と擦れて細かな傷が付くリスクを減らしたり、落下時の画面直撃を避けやすくしたりといった、日常使いでの体感メリットにつながり得る点が読みどころです。

商品化は不透明、現段階では「研究中の構想」とみるのが妥当

ただし、これはあくまで特許出願の段階にとどまる情報です。Android Authority も指摘するように、企業が出願した特許の多くは実際の製品化には至らないため、今回の出願をもって「Samsungがロール式スマホを開発中」と断定することはできません。

それでもSamsungがこの分野を検討していること自体は注目に値する動きでしょう。Gangwar氏は、画面を物理的に引き出して初めてスマホとして機能する端末という発想に前向きな評価を示し、前述の「Galaxy Z Roll'd」という仮称で愛着を表現しています。現時点では「研究段階の構想」と捉え、続報を待つのが妥当な情報です。

MWC 2026で公開された実機プロトタイプ「Mobile Slidable」

特許出願と並行して、Samsung Displayは実機プロトタイプの公開も進めています。バルセロナで開催されたMWC 2026では、5.1インチから6.7インチに拡張する「Mobile Slidable」コンセプトが展示されました。

主なスペックと挙動

  • 完全展開時の解像度は1,080×2,640 FHD+、426 ppi
  • 縦方向にレールがスライドして拡張し、アスペクト比は16:9から22:9へと変化します
  • 本体を横向きに回転させると、動画視聴や生産性用途に適した横長の表示領域になります

ただしSamsungはこの技術の商品化時期や可否について明らかにしておらず、スライダブルディスプレイは「開発中」と説明するに留めています。2022年に披露された上下両方向に展開する「Flex Slidable」も製品化には至っておらず、特許とプロトタイプの双方が積み上がる一方で、市販モデルへの道筋はまだ見えていない段階です。

ロール式OLEDの量産化はノートPC分野で先行

スマートフォン向けの動きが研究段階にとどまる一方、ロール式OLEDパネル自体は別カテゴリーで実用化が進んでいます。Samsung Displayは2025年4月から世界初のラップトップ向けロール式OLEDの量産を開始し、CES 2025でLenovo ThinkBook Plus G6 Rollableに採用されたパネルを発表しました。

項目収納時展開時
画面サイズ14インチ16.7インチ
アスペクト比5:48:9
拡張量縦方向に約50%拡大

プレミアムスマートフォン向けに開発された非偏光Eco² OLEDをラップトップに初めて採用し、パネル厚の低減と30%の消費電力削減を実現しています。Samsung Display IT営業統括の副社長Youngseok Kim氏は「ロール式ディスプレイは伸縮時にストレスを受けるが、折りたたみの量産経験に基づき耐久性を確保するよう設計した」と述べています。スマホへの応用にあたっても、こうしたPC領域での量産ノウハウが土台になると見られます。

Q&A

Q. このロール式スマホはいつ発売されますか? 特許出願の段階にとどまる情報であり、発売時期や価格は公表されていません。商品化されない可能性も十分にある段階です。

Q. 既存の折りたたみスマホ(Galaxy Z Fold/Flip)とは何が違うのですか? ヒンジで折りたたむのではなく、ディスプレイそのものを引き出して画面サイズを拡張する点が異なります。特に2つ目のアイデアでは、閉じた状態でディスプレイが完全に隠れる構造のため、画面の損傷リスクを下げる狙いがあるとの見方もできます。

Q. 1つ目と2つ目のアイデアの違いを一言で言うと? 1つ目は「閉じた状態でも画面は表に出ているが、横に引き伸ばして拡張できる」スライド拡張型、2つ目は「閉じると画面が筐体内部に完全に隠れ、両端を引いて出現させる」二分割収納型と整理できます。

出典