最大12万個のチップが詰まった200mmシリコンウエハーが額に入って約2万6千円、クリーンルームの空気を詰めた小瓶は約300円——ロシアの半導体メーカーMikronが、自社のテストウエハーや製造現場の空気を「お土産」として販売していることが報じられました。半導体製造の現場そのものをコレクタブルとして商品化する珍しい事例であり、ロシア国内でのRISC-V量産の実態が垣間見えるラインアップにもなっています。

価格は12,500ルーブル(約$170、約2万6千円)で、デザインは全12種類。1枚のウエハーには製品によって30個から最大12万個のチップが収まっています。

1枚に最大12万個のチップ、200mmウエハーが約2万6千円

Mikronが販売しているのは直径200mmのシリコンウエハーを枠に収めた額装品で、デザインは12種類。フレームの色や柄も黒・白といったシンプルなものから、レース調・ペイズリー柄・宇宙をテーマにしたものまで揃っています。価格はいずれも12,500ルーブル(約$170)で統一されており、Mikronは数量限定品としています。

額のサイズは270 × 270 × 15mm(10.6 × 10.6 × 0.6インチ)で、重量は約365g(約13オンス)。壁掛けインテリアとしてそれなりの存在感がある寸法です。額の左下にある情報パネルには機械翻訳によると「2026年 | ロシア製 | テクノ・エクスクルーシブ | ロシアン・チップ | 200mm」と記され、続けて「集積回路付きシリコンウエハー | サテライト・プレートは、マイクロ回路製造の全工程における品質管理の技術プロセスで使用される」と説明されているとTom's Hardwareは伝えています。

どのフレームにどのウエハーが入るかは購入者側で選べず、「運次第(pot luck)」とされています。

中身はRISC-Vチップや交通ICカード用チップなど

額装されているウエハーには、2022年からロシア国内で生産されているRISC-VアーキテクチャのチップであるAMUR MIK32が含まれているものもあるとされています。X(旧Twitter)でこの土産品を取り上げたDmitrii Kuznetsov氏(@torgeek)は、Mikronが新型のRISC-Vチップ「MIK32-2」のリリース準備を進めているとも指摘しています(機械翻訳ベース)。

ウエハー上のチップ数は製品によって大きく異なり、30個程度のものから最大12万個に及ぶものまであります。たとえばモスクワ地下鉄(Moscow Metro)で使われている交通系ICカード用チップがびっしりと並んだウエハーも存在するということです。

項目内容
ウエハー直径200mm
チップ数30〜120,000個(製品による)
額サイズ270 × 270 × 15mm
重量約365g
価格12,500ルーブル(約$170)

クリーンルームの「空気」入り小瓶も約$2で販売

Mikronのお土産ショップにはウエハー以外のグッズも並んでおり、中でも目を引くのが「クリーンルームの空気」を詰めた小瓶です。これはZelenograd(ゼレノグラード)にある同社のNWPクリーンルーム内の空気を封入したもので、価格は約$2(約300円)。「新商品」として紹介されています。

このほかにも、人形・マグカップ・マグネット・パズルといった一般的なギフトショップ風のアイテムも取り揃えられています。半導体製造の現場そのものを「コレクタブル」として売り出すアプローチは独特で、テスト用ウエハーという本来は廃棄・サンプル扱いされる素材に商品価値を与えている点が興味深いところです。半導体好きのコレクター、あるいはガジェット系のインテリアに関心がある人にとっては珍しい一品といえそうです。

額装ウエハーの背景にあるRISC-V量産化の動き

土産品のウエハーに含まれるMIK32シリーズについては、量産・普及に向けた動きが2026年に入って加速しています。Mikronは2026年3月3日に、国産RISC-VマイクロコントローラMIK32 Cupidを搭載したデバッグボード入りの教育キット「Start」のオンライン小売販売を開始しました。Cupid版(K1948VK015)はMikron自身で完全に製造される32ビットRISC-Vマイコンとされています。

さらにロシア国内ではMIK32以外のRISC-V量産も本格化しつつあります。

  • Baikal Electronicsは2026年中にBaikal-U(BE-U1000)マイクロコントローラを100万個市場供給する計画です
  • 小売価格は1個あたり税抜約950ルーブルとされています
  • Baikal-Uは国産のCloudBEAR BR-350(200MHz)とBM-310(100MHz)コアを採用した3コア32ビットMCUです

額装品はこうした国産RISC-V量産化のショーケースという側面も持っています。

Mikronの製造プロセスとロシア国産装置の現状

200mmウエハーに数万〜十数万個のチップが収まる背景には、Mikronの製造プロセス世代があります。MikronのMIK32マイコンは0.18μm(180nm)プロセスで製造されています。同社はZelenogradで90nmチップの量産能力を持ち、2020年には65nmプロセスの認定も取得していますが、その出力能力は明らかにされていません。

製造装置の国産化も2026年に向けて動いています。

項目内容
350nm露光装置完成2025年3月24日にZelenograd Nanotechnology Centerが発表
130nm露光装置第2契約で2026年完成予定
Mikron向け装置契約2026年2月26日、産業貿易省がMikron Zelenograd工場と15.6億ルーブルでチップ製造装置開発契約を締結
国産化目標2027年に28nm、2030年に14nm量産

額装ウエハーに記された「200mm」「Made in Russia」の表記は、こうした国産化ロードマップの一断面を物語っています。

Q&A

Q. このウエハーに載っているチップは実際に動くものですか? テストウエハー(「サテライト・プレート」)と説明されており、製造工程の品質管理のために使われるものです。額装品として販売されている個体が動作するチップを含むかどうかは明示されていません。

Q. なぜテストウエハーを土産品にしているのですか? Mikronは数量限定の「エクスクルーシブ」なシリコンアート作品として販売しており、副収入を得ているとTom's Hardwareは伝えています。販売の意図や戦略の詳細は公表されていません。

出典