60%——Tom's Hardwareが1,500人以上の読者を対象に実施した調査で、これだけのPCゲーマーが「今後2年間は新たにPCを組む予定はない」と回答しました。AIデータセンター向けの需要爆発でDRAM供給が逼迫し、メモリ・SSD・GPU価格が高止まりしていることが背景にあります。

自作予定なし60%、12ヶ月以内はわずか25%

2026年5月に実施された読者調査では、回答者のちょうど60%が新規PC構築を2年以上先送りすると答えました。残る40%の内訳と、全体に対する短期建造予定の比率は以下の通りです。

  • 今後2年以内に組む予定の回答者は、全体の15%
  • 今後12ヶ月以内に組む予定の回答者は、全体の25%
  • 今後6ヶ月以内に組む予定の回答者は、全体の合計15%
  • 今後3ヶ月以内に組む予定の回答者は、全体の合計10%

なお、Tom's Hardwareの記述では「残り40%のうち15%が今後2年以内、25%が今後12ヶ月以内に組む予定」と説明されており、短期になるほど数値が下がる構造になっています。タイムラインが短くなるほど構築意欲も比例して下がっており、現状の市場環境への忌避感がうかがえます。回答者の中には十分なスペックの既存機を使っているユーザーも含まれると考えられますが、Tom's Hardwareは、より広範な「現状の市場では自作は割に合わない」という傾向を反映していると見ています。

AIデータセンター需要がもたらした部品価格の高騰

価格高止まりの主因はAIインフラ投資の世界的拡大です。データセンター構築に必須のDRAMが世界規模で取り合いとなり、コンシューマー向け部品の供給と価格を直撃しています。

部品現状
32GB RAM$360(約5万5千円)
SSD大半が同程度の高水準
グラフィックスカード供給不足と値上げ、ビットコインマイニング期に迫る水準

DRAMの供給逼迫はグラフィックスカードにも波及しており、供給不足と価格上昇を招いています。Newegg等の一部バンドルセールを除けば、2026年にPCを組むのは厳しい見通しだと報じられています。

新CPUも市場の停滞を覆せず

AMDのRyzen 7 9850X3DやIntelのArrow Lake Refreshといった新SKUの投入も、停滞する市場を押し上げるには至っていません。製品自体の魅力ではなく、周辺部品の価格環境がボトルネックになっている構図です。

Amazon Prime DayやBlack Fridayといった大型セールに望みをかけているユーザーもいると見られますが、こうしたイベントの値引きでもAI需要が本格化する前の価格水準に戻る可能性は低いと指摘されています。自作を急がず、CPU・GPUよりもまずRAM・SSDの価格動向を注視するのが現時点では妥当な判断と言えそうです。手持ちの構成で性能に不満がないなら、無理に組まず次の世代まで待つのも合理的な選択肢です。

調査会社が示す2026年の価格・出荷予測

複数の調査会社が、AI需要によるメモリ高騰がPC市場全体を縮小させると警鐘を鳴らしています。Gartnerは2026年末までにDRAMとSSDの合計価格が130%上昇し、PC価格は2025年比で17%、スマートフォン価格は13%上昇すると推計しています。

指標2025年比の見通し(2026年末時点)
DRAM+SSD合計価格+130%
PC平均価格+17%
世界PC出荷台数−10.4%
世界スマートフォン出荷台数−8.4%

短期の見通しはさらに厳しく、TrendForceは2026年第1四半期の従来型DRAM契約価格の前四半期比上昇率を従来の55〜60%から90〜95%へ大幅に上方修正し、NAND Flashも33〜38%から55〜60%へ引き上げています。PC DRAM価格は2026年Q1に前四半期比100%超の上昇となり、過去最大の四半期上昇幅を更新する見通しです。IDCは、この前例のないメモリ不足が2027年まで続く可能性があると分析しています。

メモリメーカーの供給戦略とHBMシフト

価格高騰の構造的な原因は、メーカーが利益率の高いAI向け製品に生産能力を振り向けていることにあります。Samsungは2026年末までにHBM生産能力を現在の月170,000ウェハーから約250,000ウェハーへ、約47%引き上げる計画です。SamsungとSK Hynixはいずれも2026年2月から第6世代HBMであるHBM4の量産を開始しており、両社が同時に世界市場へ投入する形となっています。

コンシューマー市場からの後退も進行中

  • Micronは2025年12月、コンシューマ向けメモリ・ストレージ市場から撤退し、AIデータセンター顧客にリソースを集中させる方針を発表
  • SamsungとSK Hynixは2025年10月、OpenAIのStargateプロジェクト向けに月900,000枚のDRAMウェハー供給に関する意向書を締結
  • 新規DRAM工場からの意味のある増産は2027年以降になるとアナリストは見ています

つまり、供給側のボトルネックは短期的に解消される見込みが薄く、コンシューマー向けDRAM・SSDの逼迫は構造的な問題として中期にわたり続く可能性が高い状況です。

Q&A

Q. なぜRAMやSSDがこれほど高騰しているのですか? AIデータセンター構築に向けた世界規模のDRAM需要が供給を逼迫させているためです。データセンター向けの需要が優先される結果、コンシューマー向けのメモリ・SSD・グラフィックスカードまで供給と価格が連動して影響を受けています。

Q. ブラックフライデーやプライムデーまで待てば安く買えますか? セールでの値引きはあると見られますが、AI需要が拡大する前の価格水準まで戻る可能性は低いと指摘されています。短期的に劇的な値下がりを期待するよりは、必要なタイミングで買うか、買い替えを先送りするかの判断が現実的です。

Q. 今ある自作PCをまだ使い続けても問題ないですか? Tom's Hardwareは、回答者の中には現状でも十分なスペックの既存機を使っているユーザーが含まれている可能性を指摘しています。性能に不満がないのであれば、AI需要によるDRAM・SSD・GPUの価格高騰が落ち着くまで現行構成を使い続け、次世代の市場環境を見極めてから組むのも合理的な選択肢と言えます。

出典