約75万ドル(約1億1,250万円)との報告も伝えられる低予算で作られた木製ゴーレムが、画面に映る時間が長くなっても恐怖を失わない——。劇場公開された『Hokum』が興行予測を上回るスタートを切ったいま、監督Damian McCarthyの前作『Oddity』があらためて取り上げられています。アイルランドの田園地帯を舞台にした呪物ホラーで、限られた予算を最大限活かした視覚的インパクトが特徴です。

『Hokum』の監督が前作で見せた手腕

Adam Scottが主演し、Stanley Kubrickを想起させる「呪われたホテル」を描いた『Hokum』は、劇場公開後すぐに興行予測を超える成績を上げていると報じられています。The Vergeは、同作で初めてDamian McCarthy監督を知った人にこそ前作『Oddity』を勧めたい、と紹介しています。

『Oddity』は現在、以下のサービスで配信されています。

  • Hoopla
  • Kanopy
  • Hulu
  • Shudder

事前情報をなるべく入れずに観るのが理想的な楽しみ方であるとされており、これからチェックする人はあらすじや詳細を調べすぎないほうがよさそうです。

2作品に共通する「呪物」「孤立」「加害者としての男性」

『Hokum』と『Oddity』はいずれもアイルランドの広大な田園地帯を舞台に展開し、扱うモチーフにも強い共通点があります。

要素内容
舞台アイルランドの田園地帯
モチーフ呪物、オカルト、孤立、暗がり、社会の周縁で生きる怪しい男たち
世界観魔術や超自然を肯定的に取り込む
真の悪一見まともに見える男性が、身近な女性を犠牲にする構図

超自然的な恐怖を真正面から扱う一方で、本当の「悪」は一見社会的に立派に見える男性たちであり、彼らが身近な女性を傷つけるという構図が両作に共通すると評されています。ホラーの装飾を借りながら、現実の加害性を浮かび上がらせる作風です。

低予算で生まれた、画面に焼き付く木製ゴーレム

両作とも極端に小さな予算で作られている点も特徴です。『Hokum』の制作費は500万ドル(約7億5,000万円、1ドル=150円換算)。『Oddity』の予算は確定が難しいとされますが、The Vergeの記者は「最も低い報告では75万ドル(約1億1,250万円)程度との数字も見た」と述べています。

その限られた予算がもっとも効果的に投入されたのが、本作の中心に据えられた木製のゴーレムです。

  • 細部まで彫り込まれたシワ
  • 永遠に絶叫しているかのように凍りついた口元
  • 空洞の眼窩

多くのホラー映画では、呪物・モンスター・幽霊といった存在は画面に映る時間が長くなるほどインパクトを失っていきがちです。しかし『Oddity』のゴーレムは、長時間スクリーンに映し出されても不穏さと恐怖が薄れないと評されています。低予算映画における「どこに金をかけるか」の判断が冴え渡った一例といえそうです。

観るならどう楽しむか

ネタバレを避けて楽しみたい人は、レビューや解説を読み込む前にまず再生ボタンを押すのが得策とされています。Shudderなどホラー特化のサービスに加入している人にとっては、追加コストなしで体験できる一本になります。すでに『Hokum』を劇場で観た人にとっては、同監督の作風を辿る手がかりとして続けて観るのも選択肢の一つです。

短編からの叩き上げ——Damian McCarthyというホラー作家の輪郭

『Oddity』だけでは見えにくいMcCarthy監督の歩みも、近年明らかになっています。McCarthyは1981年1月16日アイルランド・コーク生まれの映画作家で、ホラー映画『Caveat』(2020)、『Oddity』(2024)、『Hokum』(2026)で知られています。ホラーへの関心は、父親がBantryで経営していたレンタルビデオ店から芽生え、その後コークのSt. John's CollegeでFilm & TV Productionを学び、2003年に修了しています。

長い助走期間と国際的な短編受賞歴

長編に至るまでの道のりは決して短くはありませんでした。2003年から2017年にかけて短編を多数制作しており、欧州最優秀短編に贈られるMelies d'Argent Awardを2度受賞しています。レンタルビデオ店で育まれたホラー観と、十数年にわたる短編制作の積み重ねが、長編での緻密な演出力につながっているとみることができます。アイルランドの地方都市から国際的なホラー作家へと階段を上ってきた経歴は、『Oddity』や『Hokum』の作風を理解するうえでも重要な背景です。

等身大の脅威をどう作ったか——『Oddity』木製ゴーレムの制作背景

低予算ながら強烈な印象を残したあの木製人形には、具体的な作り手の存在があります。エフェクトアーティストのPaul McDonnellが、McCarthyの意見を取り入れながら等身大の木製ゴーレムを制作しています。McCarthyは『Child's Play』や『Creepshow』など「人形が動き出す」古典に影響を受けたと語り、それらは常に小さなサイズだったが、もし動き出したら本当に脅威となる等身大のものを置いてみたかったとしています。骨董店を頻繁に巡る監督自身が、劇中小道具の多くを買い集めていることも明らかにされており、画面に映る物体のひとつひとつに監督の手触りが反映されています。

劇中の人物Olin Booleは、McCarthyの2013年の短編『How Olin Lost His Eye』のキャラクターであり、その短編で彼の前日譚が描かれています。

短編時代から温め続けたキャラクター、古典ホラーへの偏愛、自ら骨董店で集めた小道具、そしてエフェクトアーティストとの協働——これらが重なって、長時間スクリーンに映し出されても恐怖を失わないあのゴーレムが成立しています。

Q&A

Q. 『Oddity』はどこで観られますか? Hoopla、Kanopy、Hulu、Shudderで配信されています。日本での配信状況は現時点で公表されていません。

Q. 日本での劇場公開予定はありますか? 日本での劇場公開予定については現時点で明らかにされていません。最新の情報は各配給会社の発表をご確認ください。

Q. Damian McCarthy監督の他の作品は? 公開されている情報の範囲で言及されているのは、最新作『Hokum』と前作『Oddity』です。それ以外の作品の有無については現時点では明らかにされていません。

Q. 『Oddity』の予算はいくらですか? 正確な額は確認されていません。The Vergeの記者は「最も低い報告では75万ドル(約1億1,250万円、1ドル=150円換算)程度との数字を見た」と述べていますが、確定情報ではありません。一方で『Hokum』は500万ドル(約7億5,000万円)で制作されたとされています。

出典