開きっぱなしのタブは37個。首には、スマホを丸一日触らないと消える慢性的な鈍い痛み──。NPRの人気ポッドキャストホストで、過去にTEDトークが700万回再生を超えたことでも知られるManoush Zomorodi氏が、新刊『Body Electric』の刊行に合わせてThe Vergeのインタビューに登場し、自身のテック習慣を率直に明かしました。同書は常時接続の生活が身体的な健康にどのような影響を与えているかを掘り下げる一冊で、メンタル面を扱った前作『Bored and Brilliant』が終えたところから引き継ぐ位置付けの作品です。

NPRとコロンビア大医療センターの共同研究が新刊の核

『Body Electric』はNPRとColumbia University Medical Centerの共同プロジェクトとして進められ、リスナー参加型で実施された「Body Electric study」が査読付き科学誌への掲載に採択されたことが本人の大きな誇りだと語られています。10年以上にわたり数万人規模のリスナーと共同で双方向プロジェクトを続けてきた中で、ピアレビューを経た最初の研究になったとのことです。書籍と連動する形で進められた「研究」が査読を通過した、という関係性として読み取れます。

Zomorodi氏のキャリアは、WNYCの『Note To Self』を率いた後、NPRの『TED Radio Hour』のホストへ。2017年には自身もTED Talkに登壇し、再生数は700万回を超えています。インタビュアーを務めたThe VergeのTerrence O'Brien氏自身も、Engadgetのマネージング・エディターを10年務めた経歴を含め18年以上の経験を持つ人物です。

Pocket終了後の置き換えはMatter、開きっぱなしのタブは37個

実用面で特に共感を呼びそうなのが、Mozillaが終了した「あとで読む」アプリPocketの後継問題です。10年以上Pocketを愛用していたZomorodi氏は、終了に「打ちのめされた」と語りつつ、現在はMatterに乗り換え。ハイライト機能がきちんと動くなど、同等かそれ以上の役割を果たしていると評価しています。最近は記事保存というより、後で参照したいリサーチの保管庫として使い方が変わってきているそうです。

一方、現在開いているタブの数を尋ねられて返ってきたのは「37個。恥ずかしい」という答えでした。中身はGoogle Docs、Riverside、LinkedIn、メール(複数回開いている)、科学論文、自著のAmazonランキングなど。目当てのタブが見つからないとイラっとして新しいタブを開いてしまう──結果、Gmailが3つ開いている、という光景は多くの読者にとっても他人事ではないはずです。

一番のお気に入りはAirPods、最も残念だったのはOculus

ガジェットへの評価も歯に衣着せぬ内容です。

  • お気に入り: AirPods。歩きながら話せる自由が大きく、可能な限りZoomではなく電話を選ぶことで、移動と集中の両立を図っているといいます。
  • 最も残念: Oculus。「棚の上に置きっぱなし」とのコメントだけで済まされています。
  • 将来のウェアラブル: 首の痛みが慢性化していることを「スマホを丸一日触らないと消える本物の痛み」と表現する一方で、Meta製のスマートグラスをはじめ「顔に何か着けるデバイス」へ乗り換える準備はまだできていないとも語っています。

身体的な負担を扱う本を書いている当事者でさえ、次世代デバイスへの移行に慎重な姿勢を見せている点は、AIグラスやXRデバイスの普及を考えるうえで興味深い視点と言えそうです。

行き詰まったら「長くて退屈な散歩」へ

クリエイティブの詰まりを解消する方法として挙げられているのは、シンプルに「長くて退屈な散歩に出る」こと。気が乗らなくても歩き始めると、運動に対する身体と脳の反応を思い出し、スニーカーの鈍い足音を聞いているうちに、おおむね15分ほどで詰まりが取れるといいます。

スマホを持たずに出かけたことがあるか、という問いには「一度もない」と即答。ティーンエイジャーの子どもと高齢の両親がいるため、本人の意思に関係なく連絡可能な状態を保つ必要があるとのことです。

紙の本へのこだわりと、洒落た自伝のキャッチコピー

長文を読むときは紙の本でないと処理できないため、書籍は買い続けており、「お金を使う価値があるもの」もまた本だと答えています。

自伝映画のキャッチコピーを尋ねられての回答も洒落ています。

「Manoush Zomorodi: 歩いて行ける場所ならUberには乗らなかった女」

歩けるところには歩いていく──身体を動かすことを日常の中心に据えた生き方そのものが、書籍のメッセージとも重なる一文です。

Pocket完全終了後の代替アプリ地図──Matter以外の選択肢

Zomorodi氏が乗り換え先に選んだMatterのほかにも、Pocket難民の受け皿となる選択肢は広がっています。Mozillaは2025年7月8日にPocketを正式停止し、ユーザーは2025年10月8日まで保存コンテンツのエクスポートが可能でした。保存されたデータは2025年11月12日までに恒久的に削除されています。Matterは2025年3月にAI co-readerを追加し、Pocketユーザー向けの移行プロセスも準備していると伝えられています。

移行先として名前が挙がる主なサービス

  • Matter: Zomorodi氏自身が乗り換え先に選び、AI co-readerやPocketからの移行プロセス整備が進められています
  • Instapaper: Rakuten Koboが提携し、Kobo端末に組み込まれていたPocket統合の置き換え先になっています
  • その他: Raindrop.io、Readwise Reader、GoodLinks、Wallabagなど複数の代替アプリが選択肢として挙げられています

電子ペーパー端末との連携を重視するのか、AIによる読書支援を取るのかで選択が分かれる構図になっています。

『Body Electric』が示す具体的数値──5分・30分・25%・2万人

書籍のサブタイトルに踏み込むと、本書の科学的な手応えがより鮮明になります。正式タイトルは『Body Electric: The Hidden Health Costs of the Digital Age and New Science to Reclaim Your Well-Being』で、デジタル時代に潜む健康コストと、それを取り戻すための新しい科学を前面に掲げた構成です。

中核となる提案は具体的な数字に支えられています。座りっぱなしでスクリーンに向かう生活の弊害は、30分ごとに5分の軽い運動を入れることで相殺できるという研究結果が紹介されています。2023年に実施されたリスナー参加型の研究には2万人超(一部資料では23,000人超)が参加し、運動休憩を始めた人の80%が2週間継続でき、疲労感は平均25%低下しました。

単発の意志力ではなく、習慣の起点を「30分・5分」に固定することで、多人数が継続できたという点が大きな含意になっています。

加えて睡眠の章では、ブルーライト自体は想定されていたほど悪影響を及ぼさず、本当の問題はスマホが睡眠時間そのものを置き換えてしまう「displacement」にあるという新しい見方も提示されています。

Q&A

Q. 『Body Electric』はどんな本ですか? NPRとColumbia University Medical Centerの共同プロジェクトをベースに、常時接続の生活が身体に与える影響を扱った書籍です。メンタルへの影響を扱った前作『Bored and Brilliant』が終えたところから引き継ぐ位置付けの作品で、連動する「Body Electric study」が査読付き科学誌への掲載に採択されています。書籍と並走するリスナー参加型の研究が学術的に評価された、という関係として読み取れます。

Q. Pocket終了後におすすめされている代替アプリは? Zomorodi氏が現在使っているのはMatterです。「あとで読む」用途に加え、ハイライト機能がきちんと動作する点が評価されており、本人はリサーチ資料の保管庫としても活用しているとのことです。Matterの料金体系や対応プラットフォームなど詳細は本インタビューでは触れられておらず、現時点では明らかにされていません。

出典