「30年で0.2回」——ほぼリコールゼロと予測された車種があります。米調査会社iSeeCarsが2026年に公開した予測レポートで、今後30年でリコールが最も少なくなる車種として選ばれたのはMini Convertibleでした。「リコール」と聞くとネガティブなイメージが先行しますが、実は車種ごとに発生傾向は大きく異なります。一方で、Teslaの主要4モデルはすべて多リコール側に並ぶという対照的な結果も浮かび上がっています。

Mini Convertibleが「30年で0.2回」とほぼゼロ予測

iSeeCarsはNHTSA(米国運輸省道路交通安全局)のリコールデータのうち、直近10モデルイヤー分を分析対象とし、今後30年でのリコール回数を予測しました。調査対象車種全体の平均は4回でしたが、トップに立ったMini Convertibleの予測値はわずか0.2回と、平均の20分の1という極端な低さです。

この数字を支えているのは、2021年から2026年の間にMini Convertibleが一度もリコールされていないという実績です。直近のリコールは2020年7月で、一部仕様のエアバッグ制御ユニットのロールオーバーセンサーに関する不具合でした(横転事故時にエアバッグや安全装置が作動しない可能性があったとされています)。さらに遡ると、2018年と2012年に電動補助ウォーターポンプ関連のリコールがあった程度です。

トップ5の顔ぶれは以下の通りです。

順位車種
1Mini Convertible(0.2回)
2Lexus NX 300h
3Lincoln MKZ Hybrid
4Mercedes-Benz CLA
5Lexus RX 450h

ブランド単位で見るとMercedes-Benzが最も予測リコール数が少なく、続いてToyota、Lexusという順番でした。日本勢のハイブリッド車が複数ランクインしている点は、長年の品質志向が数字として表れた格好と言えます。

Tesla Model Yは「30年で62回」の最多予測

対照的に厳しい数字が出たのがTeslaです。Model Y、Model 3、Model X、Model Sの4車種が多リコール側に並び、特にModel Yは今後30年で62回のリコールが予測されています。これは平均(4回)の15倍以上という突出した数字です。

背景として、Model Yはこれまでに累計83回のリコールを受けており、年平均14回というペースが報じられています。具体例としては以下のような重大案件も含まれています。

  • 2025年初頭:2023年式Model Yを含む約37万6千台のリコール。電動パワーステアリングのアシストが突然停止する可能性が報告されたことを受けた措置
  • 同年後半:走行中にバッテリーパックのコンタクターが意図せず開く問題で約1万3千台のリコール

数字だけ見るとTeslaの信頼性に疑問符が付きそうですが、話はそう単純ではありません。

「リコール多数=危険」ではない事情

iSeeCarsの分析でも触れられている通り、リコール回数が多いことが必ずしも車両の危険性や信頼性の低さを意味するわけではありません。理由は主に2つです。

  1. 2010年代半ば以降、自動車メーカーは予防的にリコールを発行する傾向が強まっている:安全と説明責任を重視する流れの中で、問題が顕在化する前にリコールを出すケースが増えています。
  2. TeslaのリコールはOTA(無線アップデート)が大半:Teslaが2024年に発行した510万件のリコールの大多数はOTAソフトウェア更新で対応されたもので、ユーザーはサービスセンターに車を持ち込む必要すらありませんでした。

つまりTeslaの「リコール数の多さ」は、ソフトウェアで車両挙動を継続的に修正できる現代EVならではの特性が数字を押し上げている側面が大きいということです。

リコール回数だけで選ぶな——中古車検討時の見極め方

長期保有を前提に中古車を検討するなら、こうした予測データは「整備の手間」「リセールへの影響」を測る一つの指標になります。ただしリコール件数の解釈には注意が必要で、同じ「1件」でも対応コストは大きく異なります。実務的には次のような切り分けが現実的です。

  • OTAで完結する案件:ソフトウェア更新で済むもの。ユーザーの手間はほぼゼロで、Teslaの2024年発行分の大多数がこれに該当します。回数としてカウントされても実害は小さいと判断できます。
  • 部品交換・物理的対応が必要な案件:エアバッグ、パワーステアリング、バッテリーパックのコンタクターなど安全装備に関わるものは、サービスセンターへの持ち込みが必須となり、ダウンタイムも発生します。前述のModel Yの約37万6千台リコール(電動パワーステアリング)はこちらに該当します。

NHTSAのリコール検索などで個別案件の「対応方法」欄を確認すれば、OTA対応か物理対応かはおおむね判別できます。回数の多さだけで車両の安全性を判断するのは早計であり、内容と対応方法まで踏み込んで確認するのが妥当な向き合い方と言えるでしょう。

Fordが「多リコール側」を席巻——Lincoln Aviatorは30年で92回予測

iSeeCarsの同じ調査では、Teslaと並んで多リコール側の中心に位置するのがFordグループです。Fordは30年寿命で予測リコール数が最多の25車種のうち12車種を占め、トップ5のうち4車種はLincoln Aviator(予測92回)を筆頭にFord系が独占しています。

直近1年の実数値とトップ5の内訳

2025年4月〜2026年3月の1年間で、Fordは19,561,427台をリコール対象とし、他の自動車メーカー合計を上回る規模となっています。予測リコール上位5車種にはLincoln Aviator、Lincoln Corsair、Ford Maverick、Ford Broncoの4車種が並んでいます。

ただし内容を見るとTeslaと共通する事情も浮かびます。2026年発行分のFordリコールの約80%はソフトウェア起因とされています。参考までにTeslaのModel Y/3/X/Sはトップ16入りしているものの、OTAリコールを除外すると4車種すべてトップ25から外れます。物理対応の絶対数で見るとFord系が突出している構図です。

2026年5月の最新事例——21.9万台リコールも「OTA完了済み」

OTAで完結する案件を象徴する直近のケースが、リアビューカメラ表示遅延に関するリコールです。

NHTSAキャンペーン番号26V283。Hardware 3搭載車においてソフトウェア2026.8.6適用後、後退時にリアビュー映像が最大11秒遅延しFMVSS 111に違反する可能性があるとされています。

Teslaは2026年5月7日にModel 3・Model Y・Model S・Model Xの一部計218,868台のリコールをNHTSAに届け出ました。届出時点で対象車両の99.92%がすでにOTA修正ファーム(2026.8.6.1)を適用済みとされています。

注目すべきは規制側の動きです。NHTSAは自社サイトにOTAで完結するリコールを示す「Software Update Repairs Recall」アイコンを追加し、入庫不要であることをユーザー側でも判別できるようにしました。リコール件数という単一指標の限界を、当局自身が補正し始めた格好と言えます。

Q&A

Q. iSeeCarsの予測はどのデータをもとにしているのですか? NHTSA(米国運輸省道路交通安全局)が公開している直近10モデルイヤー分のリコールデータを分析し、今後30年でのリコール回数を予測したものです。

Q. Tesla Model Yが62回と予測されていますが、それほど危険な車なのですか? リコール回数の多さが直ちに危険性を意味するわけではありません。Teslaが2024年に発行した510万件のリコールの大多数はOTA(無線アップデート)で解決できる内容で、サービスセンターへの持ち込みは不要でした。ただし2025年初頭の電動パワーステアリング停止問題(約37万6千台)のように、物理的な対応が必要な重大案件も含まれている点には留意が必要です。

Q. 日本ブランドの車はどのような評価でしたか? ブランド単位ではMercedes-Benzに次いでToyotaが2位、Lexusが3位という結果でした。個別車種ではLexus NX 300hが2位、Lexus RX 450hが5位にランクインしています。

出典