韓国ZDNet Koreaの報道をきっかけに、SK hynix株が最大14.5%、Intel株が約14%という大幅な上昇を記録しました。SK hynixがIntelのEMIB(Embedded Multi-die Interconnect Bridge)技術を用いた2.5Dパッケージングで、HBM(高帯域幅メモリ)とロジック半導体の統合に向けたR&Dを進めているとされています。両社はいずれもこの噂を確認していません。

報道内容と株価インパクト

ZDNet Koreaは匿名の業界関係者を引用するかたちで、SK hynixがIntelとEMIBを用いた2.5Dパッケージングの共同研究開発を進めており、量産に必要な材料・部品の評価も行っていると報じています。

報道を受けて、SK hynixの株価は韓国取引所で日中最高値となる1株1,320ドル(1,946,000ウォン、約20万円)を付け、最大で14.5%上昇。同社の時価総額は9,000億ドル(約140兆円)を突破しました。Intel株も執筆時点で約14%上昇しており、直近6カ月で229%、直近1カ月だけで91%という上昇率を記録しています。

両社のいずれも、この提携報道を公式に認めていない点には注意が必要です。

EMIBがCoWoSより安く・冷えやすい理由

EMIBは、複数の半導体ダイをパッケージ基板に埋め込んだ小型シリコンブリッジで接続する技術です。TSMCの主力先端パッケージング技術であるCoWoS(Chip-on-Wafer-on-Substrate)が大きなシリコンインターポーザに依存するのに対し、EMIBは以下の特徴を持ちます。

  • パッケージあたりのコストがCoWoSより低い
  • CoWoSが抱える熱設計上の複雑さを一部回避できる
  • 両技術は市場セグメントが異なり、完全な代替ではない

派生技術のEMIB-Tは、ブリッジにTSV(シリコン貫通電極)を追加してHBM4対応と高帯域化を実現するもので、年内にfabでの量産展開が見込まれています。

IntelのCFOであるDave Zinsner氏は、3月のMorgan Stanley TMTカンファレンスで、ファウンドリ部門が先端パッケージングだけで「年間数十億ドル規模の収益となる契約の成立が近い」と述べていました。

CoWoS逼迫がIntelに追い風

TSMCのCoWoSラインは2年以上にわたって需要超過の状態が続いています。本年の世界CoWoS需要のうち、Nvidia単独で約60%、BroadcomとAMDで合わせて26%を占めると見られており、カスタムASICベンダーや中小のAIチップ開発者に回る容量は限定的だと報じられています。

項目数値
NvidiaのCoWoS需要シェア(本年)約60%
Broadcom + AMDのシェア26%

この逼迫が、EMIB・Foverosといった代替パッケージング技術を持つIntelに商機をもたらしています。Intelは、もともとCoWoS向けに設計された一部の顧客デザインがEMIBやFoverosに移植された事例を確認しているとしており、先月にはGoogleやAmazonといったハイパースケーラーもIntel Foundryの先端パッケージングに関心を示していると報じられました。

SK hynix自身のパッケージング投資との関係

SK hynixはIntelとの提携可能性とは別に、自前の2.5Dパッケージング能力増強も急いでいます。

  • 米インディアナ州ウェスト・ラファイエットに38.7億ドル(約6,000億円)の先端パッケージング工場を着工。2028年に稼働開始予定(米国内拠点としての投資で、米国市場向けの供給体制強化が目的とみられます)
  • 1月には韓国・清州に19兆ウォン(129億ドル、約2兆円)規模のパッケージング・テスト施設を承認(韓国国内拠点としての投資)

なお、上記の株価1,320ドルの最高値や時価総額9,000億ドル突破は韓国取引所(Korea Exchange)における取引データに基づくものであり、地域ごとの上場・取引条件に依存します。

もし今回のIntel EMIBとの提携が実現すれば、SK hynixは自社施設・TSMC CoWoSへの長年の依存に加えて、第3のパッケージング経路を確保することになります。現時点ではあくまで報道ベースの情報であり、両社とも公式には確認していません。続報を待つのが妥当な状況です。

EMIB-Tを最初に搭載するIntel製品群と量産拠点

EMIB-Tの初採用製品として有力視されているのが、Jaguar ShoresのリークされたテストチップでEMIB-Tを採用した最初のIntel製品となります。パッケージサイズは92.5mm×92.5mmで、4つのコンピュートタイルと8つのHBM4インターフェースを搭載する構成です。サーバ向けでも展開が進んでおり、288コアのXeon 6+ E-coreサーバプロセッサであるClearwater Forestは2026年上半期に正式発表され、第2世代EMIBとFoverosを組み合わせて採用、Diamond Rapidsも2026年下半期に同様のパッケージング技術を採用する予定です。

コスト優位と量産拠点

項目推定値
EMIB(1チップあたり)数百ドル前半
CoWoS(Rubinクラス)900〜1,000ドル

Bernsteinの試算ではEMIBの1チップあたりコストは数百ドル前半にとどまり、CoWoSのRubinクラス900〜1,000ドルと比べて優位性があるとされています。量産面ではマレーシアの先端パッケージング複合施設が2026年内に稼働開始予定で、長年のOSATパートナーであるAmkorのSongdo K5施設でもEMIB量産展開が進められています。

HBM4量産レースの2026年2月決戦とSK hynixの立ち位置

EMIB側の進展と並行して、HBMサプライ側でも2026年は歴史的な節目となります。SamsungとSK hynixは2026年2月にHBM4の量産を同時に開始する予定で、SK hynixはIcheonのM16工場とCheongjuのM15X工場で本格生産を立ち上げます。HBM4は2,048ビットI/Oの採用により前世代の2倍の帯域を実現し、電力効率を40%以上改善、SK hynixはベースダイにTSMC 12nmロジックを採用しています。

指標数値・状況
HBM市場シェア(SK hynix、Q2 2025)62%
Micronのシェア21%
Samsungのシェア17%
HBM4量産開始2026年2月
16-Hi HBM4納入要求(NVIDIA)Q4 2026までに

SK hynixはQ2 2025時点でHBM市場の62%シェアを握り、Samsungが17%、Micronが21%という構図になっています。さらに次世代品をめぐる競争も激化しており、NVIDIAはQ4 2026までに16-Hi HBM4チップの供給を要請、SK hynix・Samsung・Micronがいずれも開発を加速させています。

Q&A

Q. EMIBはTSMCのCoWoSを完全に置き換えるものですか? いいえ。両技術は市場セグメントが異なり、完全な代替関係ではありません。EMIBはパッケージあたりのコストが低く熱設計上の利点もありますが、CoWoSとは適用対象が異なります。CoWoSの容量逼迫が続くなか、代替手段として注目が高まっている状況です。

Q. EMIB-Tとは何ですか? EMIBの次世代版で、ブリッジにTSV(シリコン貫通電極)を追加することでHBM4対応と高帯域化を実現する技術です。IntelはこのEMIB-Tを年内にfabでの量産展開する見込みだと報じられています。今回のSK hynixとの2.5D R&Dの文脈とも関連し得る注目技術です。

Q. SK hynixはなぜ複数のパッケージング経路を持とうとしているのですか? HBM需要の急拡大に対応するためです。SK hynixは自社で米インディアナ州や韓国・清州に大型パッケージング施設を建設しており、加えてTSMC CoWoSにも依存しています。Intel EMIBが第3の選択肢となれば、供給リスク分散と容量確保の両面でメリットがあると考えられます。

出典