約8億1,500万ドル(約1,200億円)を、水深11,000メートル対応の深海調査船1隻に。 Valve・Steam共同創業者のGabe Newell氏が、規格外の研究船「RV11000」をノルウェーの造船会社VARDに発注したと、Luxurylaunchesが報じ、Windows Centralが取り上げています。完成は2030年を見込み、Newell氏が2021年に設立した深海探査組織「Inkfish」のフリートに加わる計画だとされています。
なぜこのニュースがテック読者にとって読む価値があるのか——それは、Steamプラットフォームの収益で築かれた個人資産が、ゲーム事業とは無関係の深海フロンティアへ大規模に振り向けられているとされる、業界人としては極めて異色のストーリーだからです。本稿では現時点で公開されている情報を整理します。
約1,200億円・水深11,000m——RV11000の規格外スペック
Luxurylaunchesによる報道では、RV11000の建造はノルウェーの造船会社VARDが担当するとされています。全長162メートル(531フィート)の大型船で、最大水深11,000メートルでの運用を想定し、最大130名の乗組員と研究者を収容できるといいます。建造費の概算は**約8億1,500万ドル(約1,200億円相当)**と伝えられています(円換算は概算)。
| 項目 | 報道されている値 |
|---|---|
| 全長 | 162メートル(531フィート) |
| 運用可能水深 | 最大11,000メートル |
| 収容人数 | 最大130名 |
| 建造費(概算) | 約8億1,500万ドル(約1,200億円) |
| 完成見込み | 2030年 |
| 建造会社 | VARD(ノルウェー) |
これらの数値は計画段階の情報であり、最終的な仕様は変わる可能性があります。
潜水艇2機収納・世界最大のバッテリー——搭載予定の装備と居住環境
深海探査向けの先進装備が搭載される計画だとされており、主な内容は以下の通りです。
- 高解像度の海底マッピング機能
- 長時間ケーブル運用や潜水艇支援に対応する4基のアクティブスタビライザー
- 潜水艇2機を収納可能な大型ハンガー
- 100%外気換気の居住区
- 高品質な内装と空気品質管理
特に注目すべきは船載バッテリーで、Luxurylaunchesは**「世界最大(world's largest battery)」と表現する容量を備え、静音科学運用時に12時間の連続稼働を可能にする**と報じています。長期間の調査航海を想定し、研究者の居住性と作業環境を高めた設計だとされています。
出どころはLuxurylaunches——公式発表は未確認
一次的な出所はLuxurylaunchesによる報道で、Windows CentralのAlexander Cope氏が同サイトを引用するかたちで紹介しています。記事タイトルにも「allegedly(〜とされる)」の語が使われており、現時点ではValveやInkfish、VARDからの公式声明は確認されていません。
Newell氏は2021年に深海探査組織Inkfishを設立し、既にRV Hydraなどの調査船を運用していると報じられており、RV11000はそのフリート拡張の一環と位置付けられているとされます(他の既存船の固有名については公開情報の範囲では明確に確認されていません)。契約・金額・スペックのいずれも一次情報源(当事者)による発表ではなく、第三者媒体の報道に基づく内容であるため、最終的な仕様や完成時期は変動する可能性があります。
このリークが事実だった場合に意味するもの
報道内容が正確であれば、ゲーム業界の著名人物が私的な財団活動として投じる事業としては異例の規模になります。約8億1,500万ドルという建造費は、Newell氏個人の関心領域がゲーム以外にも広がっていることを示す事例と読めます。
一方で、本件はValveの本業(Steamプラットフォーム運営やハードウェア事業)とは切り離された個人的な投資・財団活動として扱うのが妥当です。現時点では報道ベースの情報にとどまるため、続報を待ちつつ未確定情報として整理しておくのが現実的でしょう。
Inkfishの既存フリートと過去の深海発見実績
InkfishはこれまでRV HydraとRV Dagonの2隻を運用しており、初期探査と支援業務の基盤として機能してきたとされています。加えて100m級の「RV6000」も別途新造中だと報じられており、RV11000はそれらに続く次世代フラッグシップとして位置付けられる構図になっています。
潜水艇「Bakunawa」の到達記録
搭載運用される潜水艇「Bakunawa」は、5大洋すべてで有人潜航の最深記録を保持しているとMarine Insightが伝えています。Inkfishのこれまでの活動では、透明なスネイルフィッシュや肉食性の海綿といった、既存の分類体系には収まりにくい生物が確認されたとされ、海洋最深部におけるマイクロプラスチックの検出にも関与したと報じられています。フリート拡張は、こうした深海生物・環境調査を継続するための基盤強化として読み取れます。
VARDとFincantieri——契約規模と建造体制の詳細
Maritime Executiveによれば、契約は2026年5月29日に締結され、ノルウェーの造船所が獲得した同種案件としては過去最大規模だと伝えられています。受注したVARDはイタリアの造船大手Fincantieriグループの一員で、設計プラットフォームには自社の「Vard 9 42」が用いられるとされています。
- 契約締結日: 2026年5月29日(ノルウェー造船所案件として史上最大規模)
- 設計プラットフォーム: 「Vard 9 42」をベース、ビーム(船幅)28メートル
- 船体建造: ルーマニア・トゥルチャのVard Shipyards Romaniaが担当
- 艤装・引渡し: ノルウェー国内のVARDヤード
- 親会社: イタリアのFincantieriグループ
推進システムについてはIndexBoxが、DC技術とバッテリーハイブリッドを組み合わせた構成だと報じています。船体建造をルーマニアで、艤装・最終引渡しをノルウェーで担う形となるため、Fincantieriグループ内の生産拠点を跨ぐ分業体制が採られる案件となっています。
Q&A
Q. RV11000はいつ完成する予定ですか? 2030年にInkfishのフリートに加わる見込みだと報じられています。ただし計画段階の情報であり、竣工時期は変動する可能性があります。
Q. この情報はどこまで信頼できますか? 一次情報はLuxurylaunchesの報道で、当事者からの公式発表は現時点で確認されていません。タイトルにも「allegedly」の語が使われており、未確定情報として読むのが妥当です。
Q. Newell氏はなぜ深海探査に取り組んでいるのですか? 動機そのものについては公表されていませんが、文脈は確認できます。Newell氏は2021年に深海探査組織Inkfishを設立し、既に複数の調査船を運用していると報じられています。これらは深海の未踏領域を調査するための研究船として運用されているとされ、RV11000はその活動を拡大するためのフリート増強と位置付けられている——つまり既存の研究活動を継続・強化する一環として今回の発注が行われたとの見方が成り立ちます。
出典
- Windows Central — “I guess Steam wasn’t enough,” as Gabe Newell allegedly put USD 815 million into a real‑life Subnautica‑style vessel
- Maritime Executive — Vard Secures Norway's Highest Value Order to Build Deep-Sea Research Vessel
- Marine Insight — Tech Billionaire Gabe Newell Orders World's Most Capable Deep-Sea Research Vessel For $816 Million
