あなたがiCloudを使っているなら、その料金は不当に高かったかもしれません。英国の消費者団体Which?がAppleのiCloudロックイン慣行を問題視し、英国の消費者4000万人を代表して£30億(約30億ポンド)の損害賠償を求める訴訟が、裁判へと進むことが決まりました。Appleが無料iCloudユーザーを訴訟対象から除外するよう求めた申請は、審判部によって2対1の多数決で棄却されています。
英国4000万人 vs Apple:iCloudロックイン訴訟が裁判へ
Which?は2024年末にAppleを提訴し、AppleがiOSにおいて自社のiCloudを優遇し、サードパーティのクラウドストレージ事業者を不当に排除しているとの主張を展開しています。
訴訟の主要ポイント
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 原告 | 英国消費者団体 Which? |
| 対象消費者数 | 英国のAppleユーザー約4000万人 |
| 請求額 | £30億 |
| 対象期間 | 2018年11月8日〜現在 |
| Which?の推定平均支払額(試算) | 1人あたり平均£70の可能性(確定ではありません) |
Appleは無料iCloudユーザー(有料プランに加入していない層)を訴訟対象から除外するよう求めましたが、審判部はこの申請を2対1の多数決で棄却しました。これにより、有料・無料を問わずすべてのiCloudユーザーが訴訟の対象となっています。
対象に該当する英国の消費者は、明示的にオプトアウトしない限り自動的に請求に含まれる仕組みです。
「逸失消費者余剰」——法的に新しい論点
無料ユーザーへの損害賠償という「新たな法理論」
本訴訟で注目されるのが、「逸失消費者余剰(Forgone Consumer Surplus、FCS)」という法理論です。審判部は、この点について「同様の事例を把握していない」として「新規性のある」法的問題だと認めています。
Which?の主張の核心は以下の点にあります。
200GBプランは現在£2.99だが、競争的な市場であれば£1.99程度が「公正な価格」だった可能性があるとWhich?は主張しています。
この主張に基づく論点を整理すると次のとおりです。
- iPhoneユーザーには写真・メッセージ等のデータ保存に5GBの無料ストレージが提供される
- 5GBを超えると、Appleの有料iCloudプランへの加入を促される
- Which?の試算によれば、200GBプランが現行£2.99のところ、競争的な市場では£1.99程度が公正価格だった可能性がある
- £2.99という価格が高すぎて加入できなかったユーザーは、£1の損失を被ったと見なせる——たとえ実際には何も支払っていなくても
この理論に対し、審判部の少数意見(Apple側に立った1名の裁判官)は、「非購入者による仮定的な支払い意思に基づく二次請求が相次ぐ恐れがある」と警告しています。
現時点でAppleに損害賠償の支払い義務はなく、今後の裁判でAppleがiCloudを優遇しiOSにおける市場支配力を乱用したかどうかが審理されます。Which?はAppleに対し、訴訟によらない和解として消費者への返金とiOSのクラウドプロバイダー選択の開放を求めています。
英国発の訴訟が示すプラットフォーム規制の新潮流
ビッグテックのプラットフォーム支配力を問う集団訴訟は欧米で増加傾向にあり、本件もその流れに位置づけられると見られます。特に「逸失消費者余剰」という理論は、実際に支払いを行っていないユーザーにも損害賠償の根拠を認める可能性を開くものであり、今後の競争法訴訟に影響を与えていく可能性があります。英国での審理の行方は、プラットフォーム事業者に対する規制のあり方を問う先例となり得ると見られます。
Q&A
Q. 英国在住のAppleユーザーですが、この訴訟に自動的に含まれますか? A. 2018年11月8日以降にiCloudサービスを利用した英国の消費者は、明示的にオプトアウトしない限り自動的に請求に含まれます。有料プランに加入していない無料ユーザーも対象です。
Q. £70という試算はどのように算出されたのですか? A. Which?が試算した推定値であり、確定額ではありません。競争的な市場であれば実現していたと想定される「公正価格」と実際の価格差に基づく計算とされていますが、詳細な算出方法はソース記事には記載されていません。
Q. Appleはすでに賠償金を支払う必要がありますか? A. 現時点でAppleに損害賠償の支払い義務はありません。今後の裁判でAppleがiCloudを優遇し市場支配力を乱用したかどうかが審理される段階です。
Q. 和解した場合、返金はどのような形で行われるのですか? A. Which?はAppleに対し、消費者への返金とiOSのクラウドプロバイダー選択の開放を求めていますが、和解の形式・返金方法の詳細は現時点では確定していません。
あなたへの影響チェック
| 状況 | 判断 |
|---|---|
| 英国在住でiCloudを2018年11月8日以降に利用している | 自動的に訴訟対象に含まれます。オプトアウトを希望する場合は手続きが必要です |
| iCloudの有料プランを検討中 | 裁判の結果次第で価格や競合サービスの選択肢が変わる可能性があるため、続報を待つのも一手です |
| 英国以外のAppleユーザー | 現時点では本訴訟の直接的な対象外です |
※裁判の結論・賠償額・和解の有無はいずれも未確定のため、続報待ちです。
