2023年のHasbro大規模レイオフで約2,000人が職を失った——その衝撃が、『Magic: The Gathering Arena』開発チームを動かした。Hasbro傘下のWizards of the Coastで働くスタッフが、労働組合「United Wizards of the Coast(UWOTC-CWA)」の結成を宣言。通信労働者組合(Communications Workers of America/CWA)は2026年4月28日、スタッフの「スーパーマジョリティ(過半数を大きく超える多数)」がすでに組合加入を支持していると正式に発表した。

2,000人レイオフが火をつけた——組合結成はなぜ今なのか

Engadgetが報じたところによると、UWOTC-CWA結成への動きが始まったのは2023年、Hasbro全社規模のレイオフがきっかけだった。このレイオフは約2,000人の従業員に影響を与えた大規模なものであり、ソフトウェアエンジニアたちはKotakuに対してその経緯や職場での実態を証言している。

さらに、在宅勤務をめぐるHasbro・Wizards of the Coastの決定が「従業員の価値観とかみ合っていない」と開発者たちが感じていたことも、組合結成の動きを加速させた背景として報じられている。リモートワーク方針の変更は、開発チームにとってレイオフと並ぶ不信感の源となっていた。

スタッフが訴える6つの要求——AIから生活賃金まで

UWOTC-CWAがHasbroに対して掲げている要求は明確だ。Engadgetによると、スタッフが具体的に求めているのは以下の6点である。

  • レイオフと在宅勤務に関する保護
  • 生成AIに対するガードレール(規制・指針)の整備
  • 強制的なクランチタイム(長時間労働)の廃止
  • 職場における透明性と公平性の向上
  • 職位の上下を問わない説明責任の仕組み
  • 実際に生活を築ける水準の生活賃金

このリストが示しているのは、賃金だけの問題ではないという点だ。生成AIへの規制を明文化することで、AIによる仕事の置き換えに対して発言権を持つことを求めている。ゲーム業界では開発工程へのAI活用が急速に広がっており、エンジニアや制作スタッフにとって自分たちのクラフト(専門的な仕事)が脅かされるという懸念は切実だ。

シニアエンジニアが語った「欠けていた対抗軸」

UWOTC-CWAメンバーでシニアソフトウェアエンジニアのDamien Wilson氏は、組合結成の意義をこう語っている。

「Wizardsでは、レイオフへの発言権、上から下まで貫く説明責任、そして実際に生活を築ける生活賃金のために組合を作っています」

さらにWilson氏はこうも述べた。「これはWizards of the Coastだけの問題ではなく、ほとんどのアメリカの職場がこうした構造になっています。ユニオンは私たちのクラフトを守るための、欠けていた対抗軸です」

「欠けていた対抗軸」という言葉は重い。個人がいくら声を上げても変わらなかった職場の構造に対し、集団交渉権という仕組みで初めて対等な立場を得られると訴えている。

Hasbroへの期限は5月1日——自主承認か、正式選挙か

CWAはすでに全米労働関係委員会(National Labor Relations Board/NLRB)に対し正式な選挙の申請を行っている。ただし、Hasbroが5月1日までに自主的に組合を承認した場合、この申請は取り下げられる予定だ。

自主承認に応じない場合、NLRBによる正式な組合承認選挙が実施される見通しとなる。スーパーマジョリティが支持を表明している以上、選挙が行われた場合の組合側の勝算は低くないとみられる。Hasbroが期限内にどう判断するかが、当面の最大の焦点だ。

ゲーム業界を横断する組合化の潮流

CWAはWizards of the Coastに限らず、ゲーム業界でのユニオン活動を積極的に推進してきた組織だ。Engadgetは、CWAが近年のゲーム業界における複数の組合化の動きに関与してきたと報じている。

大手スタジオでのレイオフが相次いだここ数年、開発者たちが雇用の安定と労働環境の改善を求めて組合に頼る流れは、業界全体で加速している。UWOTC-CWAの動きはその最新事例であり、Hasbroの対応は業界全体の今後の組合化の動きにも影響を与えうる。


Q&A

Q. UWOTC-CWAとはどのような組織で、今どういう状況ですか? 「United Wizards of the Coast(UWOTC-CWA)」は、Hasbro傘下のWizards of the Coastで働くスタッフが結成を目指す労働組合です。Communications Workers of America(CWA)の傘下組織として申請されており、2026年4月28日の発表時点でスタッフの「スーパーマジョリティ」が加入を支持しています。CWAはすでにNLRBへ正式選挙を申請しており、Hasbroが5月1日までに自主承認しない場合は選挙手続きへと移行します。

Q. Hasbroが5月1日までに承認しない場合、実際どうなりますか? CWAがNLRBに申請している正式な組合承認選挙が実施されます。選挙で過半数の支持を得れば、Hasbroは法的に組合との団体交渉に応じる義務を負います。Hasbroが自主承認に応じた場合のみ、NLRBへの申請は取り下げられます。

Q. 生成AIへの規制要求は、具体的に何を意味しますか? AI開発ツールの導入範囲や条件について、会社が一方的に決定するのではなく、従業員側との協議・合意を求めるものです。ゲーム開発現場でのAI活用が拡大するなか、スタッフが自分たちの仕事の範囲や評価に関して発言権を持つことが狙いです。


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