PCは床や机の下に置くもの——その常識を覆す壁掛け型のディスプレイPCケース「Portal Advanced」を、Singularity Computersが発売しました。価格は$499(約7万8千円)からで、ディストリビューションプレートとリザーバを最初から内蔵し、本格水冷ビルドを"作品"として壁に飾れる設計が特徴です。Tom's Hardwareが報じました。
価格は$499から——ホワイトは+50%、色で大きく差がつくラインアップ
まず押さえておきたいのが価格構成です。塗装色によって価格が大きく変わるため、購入前の判断材料として整理しておきます。
| モデル / カラー | 価格 | ベース比 |
|---|---|---|
| 標準Portal | $399(約6万3千円) | — |
| Portal Advanced ブラック | $499(約7万8千円) | +25% |
| Portal Advanced ホワイト | $599(約9万4千円) | +50% |
| 追加カラー(カーボン/シルバー/ゴールドミラー) | +$49(約7,700円) | — |
ホワイトはブラックに比べて$100高く、ベース比でも50%増となるため、塗装コストを織り込んだうえでの判断が必要です。
ベースから何が変わったか——新色・フルリアパネル・電源カバーで外観を強化
Portal Advancedは、既存のPortalをベースに見せ方を強化した上位版という位置づけです。Tom's Hardwareによれば、新色テーマの追加、フルリアパネル、専用の電源カバーが採用され、より「飾る」用途を意識した造形になっています。
筐体は陽極酸化処理された6061アルミ、キャストアクリル、スチールの組み合わせで構成されています。マザーボードはmini-ITXからE-ATXまで対応し、フォームファクタを問わず組めるのは壁掛け系ケースとしては大きなメリットです。
水冷ビルダー向けの作り込み——420mmラジエーターを左右に搭載可能
最大の見どころは水冷対応です。Portal AdvancedにはD5ポンプトップとリザーバを一体化したディストリビューションプレートがプリインストールされており、ループ構築の出発点としてかなり手厚い構成になっています。ただしポンプ本体とラジエーターはユーザーが別途用意する必要があります。D5ポンプであれば互換性が確保されています。
ラジエーター搭載スペックは以下の通りです。
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 対応ラジエーター | 最大420mm × 2基(マザーボード両側) |
| ラジエーター厚 | 制限なし |
| フィル/ドレンポート | 標準12 G1/4"フィッティング |
| 対応マザーボード | mini-ITX〜E-ATX |
| GPUサイズ制限 | 実質なし(縦・横どちらも可) |
| 電源長 | 最大9.8インチ(250mm)まで |
420mmクラスのラジエーターを厚みを問わず2基積めるため、ハイエンドCPU+ハイエンドGPUを水冷で本気で冷やしたい層には魅力的な構成です。GPUの長さにも事実上の制限がないため、大型のハイエンドGPUを縦・横どちらの向きでも搭載できます。
電源だけは長さ250mmまでという制約がありますが、市販のATX電源の多くは収まる範囲です。
アクセサリと注文方法——壁掛け以外の使い方も
Singularity Computersは、Portal Advancedを壁掛け以外でも使えるよう複数のアクセサリを用意しています。
- スタンド用の脚セット:around $119(約1万9千円)でオープンエアテストベンチ化
- 電源ボード(ケーブルマネジメント用):$149(約2万3千円)
- VESAマウント:$29(約4,500円)で従来型のスタンディングテストベンチに
- 追加カラー(カーボン、シルバー、ゴールドミラー仕上げ):+$49(約7,700円)
注文はSingularity Computersのオンラインストア経由で、配送までの目安は約2週間とされています。
水冷ループを"組む"だけでなく"見せる"ことを重視するビルダー、特に自宅の作業環境にPCを物理的に統合したい層には刺さるはずです。一方で、ポンプとラジエーターは別途調達が必要なため、最終的な総額はベースの$499に加えてさらに追加投資を見込んでおく必要があります。購入を検討するなら、ループ全体の構成と予算を先に組み立てたうえで判断するのがポイントです。
Singularity Computersの素性と、Portal Advancedで追加された細部仕様
元記事では触れていない、メーカーの素性と装飾以外の機能追加について補足します。
Singularity Computersはオーストラリアに拠点を置く液冷ハードウェアの専門メーカーで、Portal Advancedはその技術蓄積を反映したショーケース向けの上位版という位置づけです。
外観・機能で追加された要素
- シルバーグラフィックを施したPCBカバーと、専用のPSUケーブルカバーを新規採用
- ホワイトエディションは白色アクリルカバー、白色PCBカバー、白パウダーコート処理の金属パーツで統一
- リアIOケーブルのパススルー、シャーシ統合の電源/リセットボタン、オプションのタッチボタン対応
ケーブル管理面では、PowerBoardと呼ばれる特許出願中のPCB技術が用意されており、コアコンポーネントのケーブル類をハブごと統合してケーブル長を標準化できる仕組みになっています。さらにPWMとARGBのハブも同梱されるため、別途ファンコントローラを買い足す必要が減ります。VESAマウントは200mm×200mm M6規格の厚手スチールプレートで、市販のモニターアームや壁掛け金具との互換性も確保されています。
2026年の壁掛け/オープンフレームPCケース市場の位置づけ
Portal Advancedがどのような市場文脈で登場したのかを、業界トレンドの観点から整理します。
| 2026年のPCケース市場トレンド | 概要 |
|---|---|
| フィッシュタンク型パノラマガラス | 全面ガラスでコンポーネントを"展示"する設計が主流化 |
| 高エアフローメッシュ回帰 | 性能重視層向けのメッシュフロントが再評価 |
| オープンエア・壁掛けディスプレイ | コンポーネント自体を彫刻として見せるニッチ |
2026年のPCケース設計を牽引したのはフィッシュタンク型パノラマガラス、高エアフロー・メッシュ設計の復権、そして木材など有機素材の利用増加の3要素とされており、Portal Advancedはそのうちの「ショーケース路線」をさらに先鋭化させた製品といえます。2026年にはオープンエア設計が創造的なピークに達し、ケースというより彫刻的なフレームやマウントとしてマザーボードやGPU、冷却系を"作品"に変える設計が増加しています。
競合状況も押さえておく価値があります。Thermaltake Core P3は5年連続で壁掛けトップピックに選ばれており、より大型ビルド向けにE-ATX対応のCore P3 Proも展開されています。壁掛けケースは典型的に10〜22kgの重量があり、壁スタッドや補強面が支えられるかの確認が必須です。
Q&A
Q. 最終的な総額はどの程度を見込むべきですか? ケース本体(ブラック$499/ホワイト$599)に加え、ポンプ本体とラジエーターは別途用意する必要があります。さらに脚セット(around $119)や電源ボード($149)などのアクセサリ、追加カラー(+$49)を選ぶ場合はその分が上乗せされます。水冷パーツ込みのトータル予算を先に組み立てておくのが安全です。
Q. ポンプやラジエーターは付属しますか? ディストリビューションプレート(D5ポンプトップとリザーバ一体型)はプリインストールされていますが、ポンプ本体とラジエーターはユーザーが別途用意する必要があります。ポンプはD5互換であれば搭載可能です。
Q. どのくらいのサイズのGPUと電源まで対応しますか? GPUはオープンレイアウトのため実質的にサイズ制限はなく、縦・横どちらの向きでも搭載可能です。電源は長さ9.8インチ(250mm)以内である必要があります。
出典
- Tom's Hardware — $499 case turns your PC into a liquid cooling masterpiece for your wall — Portal Advanced comes with an integrated distribution plate and reservoir to start of your build
- Vortez — Singularity Computers Launches Portal Advanced Wall-Mount Water-Cooling Case in Black and White
- Singularity Computers — Portal Wall Mount Water-cooling Case 製品ページ
