直近の資金調達で1,220億ドルを集めたOpenAIに、突然の暗雲が立ちこめた。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報じたところによると、ChatGPTのアクティブユーザー数と複数の収益目標が内部で未達成に終わっていた可能性があり、その情報が市場に伝わった瞬間、NvidiaやOracleなどAI関連銘柄が時間外取引で一斉に売られた。「爆発的成長」を前提に積み上げてきた数千億ドル規模のコンピュート契約が、足元の成長鈍化とどう折り合いをつけるのか——その問いが、投資家の脳裏に刻まれた。
CFOが「コンピュート費用を賄えるか」と口にした重み
WSJによれば、OpenAIのCFO・サラ・フレア氏が、同社が締結済みの数十億ドル規模のコンピュート契約を賄えるかどうかについて社内で懸念を示したという。これは公式発表ではなく、あくまでWSJが伝えた内部情報に基づく内容だが、CFOという財務の最高責任者が発したとされる言葉の重さは小さくない。
それでも、サム・アルトマンCEOとフレア氏は連名でWSJに対し「コンピュートをできる限り多く調達することで完全に一致しており、毎日共に取り組んでいます」と反論している。OpenAI側はWSJの報道内容を認めていない点は、判断の前提として留意が必要だ。
ただ、楽観を難しくするシナリオも示されている。Tom's Hardwareが伝えるところでは、あるアナリストが「大規模な外部投資を継続して呼び込めなければ、OpenAIは2027年半ばまでに資金が枯渇する可能性がある」と指摘した。同社が1,220億ドルの資金調達に成功したこととセットで見ると、「調達額の大きさ」と「消費速度の速さ」のギャップがいかに深刻かが浮かび上がる。
NvidiaがマイナI%、SoftBankは9.9%安——具体的な株価への波及
報道がマーケットに広がると、MarketWatchが伝えるように、OpenAIと事業上の結びつきが深い企業の株価はプレマーケット取引で即座に反応した。
- Nvidia:−1%
- AMD:−4%
- Oracle:−5%
- CoreWeave:−5%
- SoftBank(東京証券取引所):−9.9%(日経225内で最も下落幅の大きい銘柄の一つ)
体感として分かりやすく言えば、「OpenAIへの投資・インフラ供給で成長を描いていた企業ほど、売られ幅が大きい」という構図だ。SoftBankの約10%安は特に象徴的で、アルトマン氏との関係性が深く知られている同社への市場の視線が、一夜にして変わったことを示している。
一方でMicrosoftは、OpenAIとのクラウド独占契約を最近終了させたものの、OpenAIの営利事業の27%を保有し数十億ドルを出資していることから、今回の報道では目立った株価への影響が出ていないと伝えられている。独占契約の解消が、リスク分散として機能した側面もありそうだ。なお、これらの数値はプレマーケット時点のものであり、終値とは異なる場合がある。
競合が本格追撃——Claudeのシェア拡大、GeminiのベンチマークでChatGPTを上回る場面も
今回の懸念を一段と深刻にするのが、競合の急速な追い上げだ。AnthropicのClaudeファミリーはプログラマーや法人ユーザーの間でシェアを着実に伸ばしており、GoogleのGeminiファミリーは複数のベンチマークでChatGPTを上回り始めていると報じられている。アルトマン氏が昨年末に社内で「コードレッド」を宣言したとされる背景には、こうした競争環境の変化がある。
皮肉なのは、OpenAIが競争激化のただ中で、インフラ投資をむしろ拡大していることだ。Oracleとの4.5ギガワット規模・総額3,000億ドルの契約、Nvidiaのハードウェア10ギガワット分を提供する1,000億ドル規模のアライアンスと、その規模は常識の範疇を超えている。同社の投資家向けメモには「振り返ると、あの慎重さは規律というより、需要の到来速度を過小評価していたように見える」とあり、積極投資を自ら正当化している。しかし成長が当初見込みを下回るなら、この論理は逆回転する。
対照的なのがAnthropicのダリオ・アモダイCEOだ。かつてカンファレンスで「一部の企業はインフラ投資を推しすぎている」と発言しており、OpenAIとは真逆の哲学を示していた。
情報の信頼性——WSJの報道にOpenAIは反論、何が確定事実か
今回整理しておきたい事実関係は以下のとおりだ。
確認できていること: WSJが内部情報に基づき「ユーザー数・収益目標の未達」と「CFOのコンピュート費用に関する懸念」を報じた。アルトマン氏とフレア氏はWSJへの連名コメントで積極投資方針を改めて表明しつつ、報道内容に異議を唱えた。株価は上記のとおりプレマーケットで下落した。
確認できていないこと: 内部目標の未達がどの程度の規模だったか。CFOの懸念発言の具体的な文脈。
もし未達が事実であるなら、「爆発的成長」を前提に設計された巨額コンピュート契約の返済スキームそのものが見直しを迫られる可能性がある。3,000億ドル規模の契約は、成長が計画通りに続くという仮定の上に成り立っているからだ。
Q&A
Q. OpenAIは内部目標の未達を公式に認めていますか? 認めていません。今回の情報はWSJが報じた内容に基づくものであり、OpenAIのアルトマンCEOとフレア CFOは連名でWSJに反論コメントを出しています。公式発表を待たずに結論を出すことは避けるべき段階です。
Q. 株価への影響はどの企業に出ていますか? プレマーケット取引でNvidiaが−1%、AMDが−4%、OracleとCoreWeaveがそれぞれ−5%の下落が報じられています。東京証券取引所ではSoftBankが9.9%安となり、日経225内で特に下落幅の大きい銘柄の一つになっています。Microsoftは今回の報道では株価への影響が出ていないと伝えられています。いずれもプレマーケット時点の数値であり、終値とは異なる場合があります。
Q. OpenAIが資金不足に陥る可能性はありますか? Tom's Hardwareの報道によれば、あるアナリストは「大規模な投資調達を継続できなければ2027年半ばまでに資金が枯渇する可能性がある」と指摘しています。ただしこれはアナリストの試算であり、確定した予測ではありません。同社は直近の調達ラウンドで1,220億ドルを集めており、短期的な資金ショートを示す公式情報は現時点では存在しません。
