約25億ドル(約3,900億円)相当のNvidia搭載サーバーが中国へ密輸されたとされる事件を受け、NvidiaのCEOジェンセン・フアン氏が異例の名指しでSupermicro(Super Micro Computer)に輸出規制の順守強化を求めました。台北・松山空港で土曜日、報道陣に語ったものです。台湾当局も今週、AIハードウェア違法輸出に対する初の本格的な摘発に踏み切っており、米国主導だったAIチップの輸出管理を巡る動きに台湾も加わる構図となっています。Nvidiaチップの供給網と地政学リスクが交差する局面で、日本のAIインフラ調達にとっても無視できない動きです。
25億ドル密輸、Nvidia CEOが異例のSupermicro名指し警告
フアン氏は松山空港で報道陣に対し、Nvidiaがパートナー企業に米国の通商規則の順守を求める姿勢を改めて強調しました。
「我々はパートナーがコンプライアンスを守ることを強く求めている。彼らが規制順守を強化・改善し、今後そうした事態が起こらないようにしてほしい」
この発言の背景には、3月に開示された米連邦検察による起訴があります。Supermicroの共同創業者Yih-Shyan「Wally」Liaw氏ら3名が、東南アジアのペーパーカンパニーを経由して約25億ドル(約3,900億円)相当のNvidia搭載サーバーを中国へ密輸する共謀を行ったとして起訴されました。Liaw氏は無罪を主張しており、Supermicro自体は被告として名指しされておらず、捜査に協力していると説明しています。
台湾が初の本格摘発——基隆地検が3名を立件
台湾の基隆地方検察署は今週、AIハードウェア違法輸出に対する初の本格的な摘発を発表しました。3名の容疑者が虚偽の出荷申告書を提出し、Nvidia AIチップを搭載したSupermicroサーバーを中国・香港・マカオへ輸出していたとされます。
この台湾の案件は、3月に開示された米連邦の起訴とは別個ですが密接に関連していると報じられています。
H200は「ライセンスあり、納入ゼロ」——次世代Vera CPUは中国も視野
同じ松山空港での会見で、フアン氏は5月20日の決算発表で示した次世代CPU「Vera」のアドレス可能市場2,000億ドルに中国市場も含めていると述べました。
「H200は中国向け出荷のライセンスを取得している。あの市場にサービスを提供できれば素晴らしいことだ。中国市場は非常に重要で、もちろん極めて大きい」
しかし、現実とのギャップは大きい。ライセンス自体は下りているものの、現時点で中国の顧客にH200は1台も納入されていません。購入が認められた中国企業は約10社にとどまり、出荷もまだ始まっていないとされています。今月行われたトランプ大統領と習近平国家主席の北京会談でも、Nvidiaチップ販売を巡る突破口は得られなかった、とReutersを引いて伝えられています。「ライセンスはあるが、納入はゼロ」——この対比が、米中AI半導体問題の現状を端的に示しています。
Computex基調講演とVera Rubinプラットフォーム
フアン氏はNvidiaのGTC Taipeiイベントと、それに続く6月1日のComputex基調講演を控えています。基調講演ではVera Rubinプラットフォームのソフトウェアスタックを掘り下げる見通しです。フアン氏自身はこれを「おそらく台湾史上最大の製品ローンチ」と表現しています。Vera Rubin NVL72システムは1台あたり200万点近くの部品で構成され、約150社の台湾エコシステムパートナーが関与していると説明されています。
今後の3つの注目点
短期的には、台湾・基隆地検の司法手続きの進展と、米国でのLiaw氏に対する裁判の動向が焦点となります。中長期で押さえておきたいのは次の3点です。
- 台湾の司法プロセス: 基隆地検の立件がどこまで広がるか、3月の米連邦起訴との連動性がどう示されるか
- H200の中国向け出荷: ライセンス取得済みながら納入ゼロの状態が動くのか、約10社の認可企業への出荷開始時期
- Vera Rubin発表での中国市場への言及: 6月1日のComputex基調講演で、フアン氏が中国市場や輸出規制対応にどう触れるか
日本のテック読者にとっては、AIサーバー需給と価格動向、台湾サプライチェーンの安定性に直結する話題であり、続報を引き続き確認していきたい局面です。
H200中国販売の制度設計——12月発表と1月最終規則の二段構え
H200の中国向け出荷は、二段階の制度整備によって輪郭が定まりつつあります。2025年12月8日にはトランプ大統領がH200の中国出荷を容認すると発表し、米国を経由しての通過と25%の関税を条件として提示しました。続いて米商務省産業安全保障局(BIS)が2026年1月15日に最終規則を公布し、H200やAMD MI325Xに対する審査方針を「拒否推定」から「個別審査」へと切り替えています。発表と規則化が約1か月ずれている点が、制度設計の理解では重要となっています。
数量条件と認可ディストリビューター
- 認可された顧客1社あたり最大75,000枚までの購入が可能となっています
- 米国内向け販売量比で50%の数量上限が設けられています
- 認可ディストリビューターにはLenovoとFoxconnが含まれています
Supermicroの内部対応と起訴状で示された手口
事件発覚を受けて、Supermicroは経営面で複数の動きを見せています。2026年4月7日には取締役会主導の独立調査の開始を発表しました。業績面では2026年度通期売上ガイダンスを389億〜404億ドルへ、第4四半期売上を110億〜125億ドルへと引き上げています。一方で米連邦の起訴状では具体的な密輸手口が示されており、関与した人物の一部は依然として逃亡中のままとなっています。
起訴状で示された手口と関与企業
- ダミーサーバー倉庫の運用と、ヘアドライヤーを用いた包装ラベル剥がしといった手口が起訴状で明示されています
- 経由先とされる東南アジア企業はFY2024でSupermicroの世界11位顧客にあたり、取引額は9,970万ドルに達したとされています
- 共謀者の一人とされるSteven Chang氏はアジアの場所に逃亡し、依然として逃亡中です
Q&A
Q. なぜ今、台湾が動いたのか? 公表されている情報の範囲では、3月の米連邦起訴で表面化した約25億ドル規模の密輸スキームに、Supermicroサーバーの輸出が関わっていたとされる点が大きいと考えられます。台湾としてはAIハードウェア違法輸出に対する初の本格的な摘発と位置づけられており、基隆地検が今週、3名の容疑者を立件したと公表しています。具体的な経緯の詳細は出典元を参照してください。
Q. Supermicro自体は起訴されているのですか? いいえ。米連邦の起訴で被告として名指しされているのは共同創業者のYih-Shyan「Wally」Liaw氏ら3名で、Liaw氏は無罪を主張しています。Supermicro社自体は被告として名指しされておらず、捜査に協力していると説明しています。
Q. H200は中国に出荷されているのですか? ライセンス自体は取得済みですが、現時点で中国の顧客に1台も納入されていないとされています。購入が認められた中国企業は約10社にとどまり、出荷は始まっていません。今月のトランプ・習会談でも突破口は得られなかったと、Reutersを引いて伝えられています。
Q. 日本のAIインフラ調達への影響は? 本件について日本市場への直接的な影響は公表情報では明らかにされていません。ただし、Nvidia AIチップのグローバル供給網と輸出管理の運用が厳格化する流れが続けば、サーバー納期や供給配分に影響が及ぶ可能性は一般論として意識しておく価値があります。
出典
- Tom's Hardware — After $2.5 billion Supermicro smuggling bust, Nvidia CEO urges company to fix export control compliance — Taiwan also begins to crack down on AI GPU chip smuggling to China
- CNBC — U.S. clears H200 chip sales to 10 China firms as Nvidia CEO looks for breakthrough
- U.S. Department of Commerce / BIS — Revised Semiconductor License Review Policy for China
