日本国内で深刻化するクマ被害を受け、北海道のメーカー大田精器が製造するアニマトロニクス・ロボ「Monster Wolf(モンスターウルフ)」——赤く光る目と50種類の咆哮で野生動物を威嚇するロボ狼——の需要が急増しています。Tom's Hardwareによると、同社は「生産が追いつかない」状態に陥り、納期は2〜3ヶ月待ちです。
今年の受注がすでに通常1年分を超過
大田精器の大田裕治社長はAFPの取材に対し「生産が追いつかない」と述べたと報じられています。今年のMonster Wolfの受注はすでに50台に達しており、これは同社が通常1年間に製造する台数を超える水準です。
背景にあるのは、日本国内のクマ被害の急増です。最新の統計では、昨年クマによって命を落とした人は13人に上り、前年比で2倍以上となっています。目撃報告も全国で50,000件に達し、これも過去最多を更新する水準です。
死亡事例は最も深刻なケースですが、それ以外にも住宅への侵入、学校周辺の徘徊、温泉地での宿泊客を怯えさせる事案、スーパーマーケットでの暴れ回りなど、人的・社会的影響は広範囲に及んでいると伝えられています。
なぜクマが逃げるのか — 50種の咆哮と赤く光る目
Monster Wolfは野生のオオカミを模した外観のアニマトロニクス・ロボットです。価格は$4,000超(為替により概ね約60万円台)とされています。
主な仕様は以下の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 検知方式 | 赤外線センサー |
| 音響 | 50種類の大音量サウンド |
| ライト | 赤く光る目、青色のアンダーライティング、強烈なLED |
| 動作 | 首が左右に振れる可動機構 |
| 電源 | 12Vカーバッテリー(オプションでソーラー充電パネル) |
| オプション | 走行用ホイール |
赤外線センサーで野生動物を検知すると、50種類の音、発光、首振り動作で威嚇します。製品ページでは、本物のオオカミを模しつつ「強烈なLEDライトと大音量の声を発する」ことで恐怖感を高めると説明されているとのことです。
実際の動作を示す2024年の動画もTom's Hardwareの記事内で紹介されています。
携帯版とAIカメラ連携も計画
大田精器は製品ラインナップの拡張も計画していると報じられています。AFPによれば、ハイカー・釣り人・通学する子どもなどを想定した携帯型Monster Wolfの開発が視野に入っているほか、AIカメラを活用したクマ対策技術の高度化も検討されているとのことです。
なお、クマ対策の高度化は他の地域でも進んでおり、宮城県石巻市では「クマの大量発生」への懸念から、クマ撃退用ドローンの運用が今年初めに報じられています。
導入を検討する自治体や事業者にとっては、現状の納期2〜3ヶ月という生産能力がボトルネックです。携帯版の登場時期や、AIカメラとの連携仕様がどう詰められていくかが、今後の注目ポイントとなります。
自衛隊出動と警察発砲容認——国全体で進む多層防御
ロボ狼の需要急増の背景には、もはやロボットだけでは抑えきれない国家規模の対応強化があります。防衛省と秋田県は11月5日に協定を締結し、自衛隊員が餌入りの箱罠の設置、地元ハンターの輸送、死亡個体の処分を支援する体制を整えました。隊員は銃器による駆除は行わず、防弾チョッキ・熊スプレー・ネットランチャーを装備して果樹園周辺などで活動しています。
並行して、技術と法執行の両面でも対策が進行中です。
- 警察官の発砲容認:警察庁は、秋田県と岩手県の住宅地でハンターが間に合わない場合、機動隊によるクマの射撃を認めると発表しました
- 吠えるドローン:岐阜県では犬の鳴き声や花火の音を再生してクマを追い払うドローンの実験が行われています
- 生息数の規模:クマ目撃は全国で5万件超、捕獲・駆除数は14,601頭と過去最多を記録しました
累計380台超・最大1km先まで届く咆哮——製品の到達範囲と進化
製品自体の市場浸透度と技術的詳細についても、新たに明らかになった情報があります。累計販売台数はすでに380台を超えており、購入者の多くは農家、自治体、ゴルフ場運営者、屋外で働く地方の従事者です。元記事で触れた仕様に加え、音と光の到達範囲は想像以上に広いことが分かっています。
| 項目 | 補足スペック |
|---|---|
| 音の到達距離 | 最大約1km先まで聞こえる50種以上の録音音声 |
| 発光部 | 赤色LEDの目に加え、尾部に青色LED |
| 開始価格 | 約60万円(約3,803米ドル)から |
| 起源 | 2016年に鹿・猪・クマ対策として投入、当初は「ギミック」と揶揄 |
将来モデルの方向性も具体化しています。AIカメラが接近する動物の種類(クマ・鹿・猪)を識別し、それぞれに合わせた音を選んで再生する仕組みが検討されています。日本では狼が1世紀以上前に絶滅しており、その国で機械仕掛けの狼が再び田畑を守る構図そのものが象徴的だと指摘されています。
Q&A
Q. Monster Wolfの価格はいくらですか? $4,000超(為替により概ね約60万円台)とされています。日本円での正確な販売価格は公表されている情報の範囲では明らかになっていません。オプションとして走行用ホイールやソーラー充電パネルも用意されています。
Q. 注文してからどのくらいで届きますか? 現在、大田精器は購入希望者に対して2〜3ヶ月の納期を案内しているとのことです。今年すでに50台の受注があり、これは通常1年間の製造台数を超える水準であるため、生産が需要に追いついていない状況です。
Q. どのような仕組みでクマを追い払うのですか? 赤外線センサーで野生動物を検知すると、50種類の大音量サウンド、赤く光る目、青色のアンダーライティング、強烈なLED、首を左右に振る動作で威嚇します。電源は12Vカーバッテリーで、オプションでソーラー充電にも対応しています。
出典
- Tom's Hardware — Japan can’t make robot wolves fast enough to counter the rise in bear attacks that have killed 13 humans this year — $4,000+ animatronic Monster Wolf features intense LEDs and makes loud noises
- NPR — Japan deploys the military to counter a surge in bear attacks
- CNN — Facing a spike in deadly bear attacks, Japan turns to the military and drones that bark
