米連邦通信委員会(FCC)が、スパム電話やロボコールを根絶するため、通信サービスプロバイダーに対してより厳格なKYC(Know Your Customer=顧客確認)ルールを義務付ける新たな規制案を提案しました。なお、今回の規制案は米国の通信キャリアを対象とした米国版のみの措置です。現行ルールの「最低限しかしない」キャリアへの対処が主な狙いです。
スパム電話を流したキャリアは発信件数分だけペナルティが増える
FCCが提案するKYCルールの強化は、違法な電話がネットワークに入り込む前に遮断することを目的としています。現在、米国の通信キャリアはすでに顧客確認と不正通話防止の義務を負っていますが、Android Authorityによると、FCC委員長のBrendan Carr氏は一部のサービスプロバイダーが「最低限のことしかしない(あるいはそれ以下)」状態で、違法なロボコールスキームに加担してしまっていると声明で述べています。
具体的な実施方法についてはFCCが現在パブリックコメントを募集している段階で、顧客の氏名・政府発行のID・住所・既存の電話番号といった情報の確認を求めることが、対策の一例として挙げられています。ただし、これらの措置がどのように実施されるかは現時点では確定していません。
今回の提案で注目すべき点のひとつが、ペナルティの算定方法です。FCCは、キャリアのKYCルール違反を評価する方法についてもコメントを募集しており、そのネットワークから発信された違法通話の件数に基づいて比例的なペナルティを科すことを検討しています。
つまり、自社ネットワークからスパム電話が多く発信されるほど、キャリアが受けるペナルティも重くなる仕組みです。AT&T・T-Mobile・Verizonといった大手キャリアにとっても、ネットワーク上の不正通話を放置することがビジネスリスクに直結する可能性があります。
外国企業・海外試験機関への規制も同時に強化(米国市場対象)
FCCはスパム電話対策と並行して、外国企業に関する規制も追加しています。これらの規制はいずれも米国市場を対象とした米国版のみの措置です。
ひとつ目は、FCCの「カバードリスト(covered list)」に掲載されている外国企業に対する措置です。カバードリストとは、安全保障上の懸念等を理由にFCCが指定した外国企業のリストです。これらの企業はすでに米国での機器販売が禁止されていますが、Android Authorityによると、Carr氏は「多くの企業が国際電気通信権限の法的定義に該当しないサービスを提供することで、米国内での事業を継続している、あるいは継続している可能性があります」と述べているとのことです。新ルールのもとでは、こうした企業は認可申請が必要となり、国内事業者に与えられているブランケット認可(包括的な事前許可)を利用できなくなるとされています。
ふたつ目は、海外の試験機関・認証機関の扱いです。Android Authorityによると、FCCは今後、米国の試験機関・認証機関と相互協定(reciprocity agreement)を結んでいない海外機関を認定しない方針を示しているとのことです。Carr氏は「これにより、互恵的な国際商業関係が確保されるだけでなく、機器認証プロセスの完全性を保証するためのFCCの監視・執行権限も担保されます」と述べているとされています。
現時点では提案段階——パブリックコメントを経て正式化へ
今回の規制案はいずれも現時点では提案段階であり、FCCがパブリックコメントを収集している最中です。正式なルールとして施行されるかどうか、またその具体的な内容については今後の審議次第となります。
Q&A
Q. KYC(顧客確認)とは何ですか? KYCは「Know Your Customer」の略で、サービス提供者が顧客の身元を確認するプロセスです。金融機関では一般的な手続きですが、今回FCCは米国の通信キャリアに対しても同様の厳格な本人確認を求めようとしています。
Q. 今回の規制案はいつから施行されますか? 現時点では提案段階であり、FCCがパブリックコメントを募集している段階です。正式な施行時期は確定していません。
Q. ペナルティはどのように算定されますか? FCCは、キャリアのネットワークから発信された違法通話の件数に基づいて比例的なペナルティを科すことを検討しています。つまり、ネットワーク上でスパム電話が多く発信されるほど、キャリアへのペナルティも重くなる可能性があります。ただし、具体的な算定方法についても現在パブリックコメントを募集している段階です。
出典
- Android Authority — Tired of robocalls? The FCC is too, and it's taking more steps to end them
