最初に製造されたCray T3Dスーパーコンピュータ、シリアル番号6001の個体「Typhoon」がオークションに出品されました。開始価格は£60,000(約1,140万円・およそ$81,000)。ベクトル型から大規模並列スーパーコンピューティングへの転換を象徴する最初の1台であり、£60,000・1996年6月のTOP500欧州最速・512基のDEC Alpha 21064という3点で、文字通り歴史的な個体です。Tom's Hardwareが伝えています。

新品当時のT3Dは$15M(約21億円)級の装置だったとThe Saleroomは説明しており、開始価格との大きな差が今回の出品の話題性を高めています。

主要スペック・主要数値

  • 開始価格: £60,000(約1,140万円・およそ$81,000)
  • 新品当時の参考価格: $15M(約21億円)
  • 来歴: Cray社内開発機 → エディンバラ大学に設置
  • ランキング: 1996年6月のTOP500で欧州最速
  • 構成: シングルキャビネット Cray T3D-MC512
  • プロセッサ: 150 MHz動作のDEC Alpha 21064を512基
  • 冷却方式: Fluorinert(フロリナート)液体冷却
  • 筐体サイズ: H193cm × W117cm × D193cm(6フィート超)
  • 同梱: HEU第一段冷却ユニット(6フィート超・0.85トン)
  • オークション終了予定: 5月31日
  • 同時出品: Cray Triton T-932、Cray Y-MP4E

オークションの概要——開始価格£60,000(約1,140万円)

オークションを取り扱うのはThe Saleroomで、終了日は5月31日と告知されています。記事執筆時点では入札はなく、ウォッチリスト登録者は10名にとどまります。

開始ラインに設定された£60,000は、参考レートでおよそ$81,000(約1,140万円)に相当します。Tom's Hardwareは、サイズと重量の点から愛好家層への訴求は限定的になりそうだと指摘していますが、The Saleroomは新品当時のCray T3Dが$15M(約21億円)クラスの装置だった点を引き合いに、むしろ割安と位置づけているとされています。

なぜ「Typhoon」は博物館級なのか——最初に製造された個体がエディンバラに渡った経緯

出品個体には、最初に製造されたT3Dとしての来歴があります。元はCray社内の開発用マシンとして使われ、その後エディンバラ大学(Edinburgh University)に設置され、「Typhoon」という愛称で呼ばれた個体です。

TOP500ランキングでは、1996年6月時点で欧州最速のスーパーコンピュータとして記録されました。オークションのノートは本機を「T3Dシリーズの初号機として、Crayが伝統的なベクトル型システムから大規模並列スーパーコンピューティングの時代へ移行する決定的な一歩を象徴する存在」と説明しています。さらにコレクター・愛好家にとっては「極めて重要な博物館級の現存個体」と位置づけられている、と伝えられています。

フロリナート液冷で512基のAlpha——「Tomato Red」の中身を開ける

筐体は「Tomato Red」と呼ばれる赤い外装で、サイズはH193cm × W117cm × D193cm。高さは6フィート(約183cm)を超える堂々たる体躯です。

中身はシングルキャビネット構成のCray T3D-MC512。コンピュート用のプロセッサとして150 MHz動作のDEC Alpha 21064を512基搭載すると説明されています。冷却にはFluorinert(フロリナート)を用いた液体冷却方式を採用し、本体に加えてHEUと呼ばれる第一段冷却ユニット(こちらも高さ6フィート超、重量0.85トン)が一式に含まれます。当時の最先端を象徴する構成が、ほぼそのまま現存している点も今回の出品の大きな見どころとなります。

同時出品される他のCray機——Triton T-932とY-MP4Eも

今回のT3Dと同じタイミングで、別の2台のCrayスーパーコンピュータも出品されています。具体的には、Cray Triton T-932 SupercomputerとCray Y-MP4E Supercomputerの2機種で、いずれも5月31日に終了予定です。

T3D単体ではなく、Crayの歴代マシン全体を見渡せる珍しい機会と言えます。

T3Dアーキテクチャの技術的背景——3Dトーラスと「他社CPU初採用」という転換点

Typhoonの歴史的価値を理解するうえで、T3Dシリーズそのものの位置づけを技術面から押さえておく必要があります。T3Dは1993年に発表され、Crayが他社製マイクロプロセッサを採用した初の機種でもありました。長らく自社設計ベクトルプロセッサに依存してきたCrayにとって、戦略上の大きな転換点となっています。

構成面では、Processing Element(PE)を32基から2048基まで構成可能で、各PEは150 MHzのDEC Alpha 21064(EV4)と16または64 MBのDRAMを備えていました。

相互接続には特徴的な方式が採られています。

  • 3次元トーラス型インターコネクトを採用し、x・y・zの3方向で双方向接続、各方向は端で巻き戻される構造です
  • 最初のT3Dプロトタイプは1993年9月初頭にピッツバーグ・スーパーコンピューティングセンターへ設置され、同年9月27日に正式発表されました

遊び心の面でも逸話があります。T3D MC筐体の前面にはApple Macintosh PowerBookが組み込まれており、その唯一の用途はカラーLCDにCray ResearchとT3Dのアニメーションロゴを表示することでした。

オークション主催者と出品コレクションの全体像——20年以上抱えてきた個人コレクター由来

今回のセール全体の枠組みにも注目すべき背景があります。主催はRWB Auctionsで、3台の歴史的Crayスーパーコンピュータを扱うオンライン限定のタイムドオークションとして企画されました。対象は技術系の機関・博物館・コンピューティング史のコレクター層が想定されています。

出品物の素性も明確に開示されています。

「子供時代に始まったコンピューティングと技術への生涯にわたる情熱に動かされ、20年以上にわたってこれらのマシンを所有してきた個人コレクターのコレクションから出品される」

ヘッドオークショニアのGareth Wasp氏は、本セールをRWB Auctionsがこれまで扱った中で最も珍しいコレクションの一つとコメントしています。

同時出品のY-MP4Eには、Typhoonと直接結びつく来歴もあります。シリアル1904の同機は、エディンバラ並列計算センターでCray T3Dのフロントエンドシステムとして稼働しており、T3D設置と揃えたTomato Redとグレーパネル仕上げで統一されています。3台が同一エコシステム由来である点が、本セール全体の希少性を一段と高めています。

Q&A

Q. このCray T3Dはなぜ歴史的に重要なのですか? Crayが伝統的なベクトル型システムから大規模並列処理(Massively Parallel)アーキテクチャへと舵を切ったT3Dシリーズの最初に製造された個体(シリアル6001)であり、1996年6月のTOP500では欧州最速にランクされた1台だからです。

Q. 開始価格£60,000(約1,140万円)は妥当ですか? The Saleroomは、新品当時のT3Dが$15M(約21億円)規模だったことを引き合いに割安と位置づけています。一方でTom's Hardwareは、本体サイズと重量を踏まえると愛好家層への訴求は限定的になりそうだと指摘しています。

Q. 個人が落札する際の現実的なハードルは? Tom's Hardwareは、サイズと重量の点から愛好家層への訴求は限定的になりそうだと伝えています。詳細は出典元を参照してください。

出典